記者 雷蔵さんと勝さんとは「花の白虎隊」以来「踊り子行状記」「怪盗と判官」「花の渡り鳥」と既に四回共演をしていますが、今度の「柳生連也斎・秘伝月影抄」はいろんな意味で、真の競演作品だと思いますが、お二人に今度の主役たる柳生兵介と鈴木綱四郎の役についての感想を語り合って頂きたいと思います。

 今度の鈴木綱四郎の役は、気に入っています。ですから御期待通り、雷蔵さんに懸命にぶつかってゆく積りです。僕は今まで演った役柄と自分の持った持味から、どの役にも甘い味があったと思っていましたし、幾分それを意識していましたが、今度の役は、甘さがあってはいけないと思いますから、僕としては、演技的に大きな転換が必要だと自覚して、真剣に役柄の研究をしています。

雷蔵 僕も今度の勝さんとの共演には、大いにファイトを感じています。柳生兵介の役は、どつちかといえば辛棒役で、綱四郎の圧倒的な押しを、受け止めねばならない役で、そこに演技的にも苦心があります。飛躍的な綱四郎に対して、理性的に処理してゆくのが兵介役の狙いではないでしょうか。

 綱四郎という男は、天才なるが故に宿命的に破れるが、最後まで善意な男なのです。ただ剣に対して宿命的なものを持っていた−という解釈で、僕は綱四郎役を演じたいと思っています。

雷蔵 綱四郎役の解釈は、勝さんがいう通り、僕も同感です。シナリオを読んだある人が、兵介が美和(角梨枝子)の恋情に対し余り無関心すぎると評していたが、僕はそうは思わない。現代の若い男が、キャバレーへ行って、そこの女に恋情を持たれたとしても、その男が単にキャバレーの女としての交いと思っていて、深い関心を持たなかったら、兵介同様に女の恋情を無視する結果となるし、初めからキャバレーの女に興味を持って、逆にその女に恋情を感じる男もあるだろうから、現代的に解釈しても、あれで好いと僕は思ったネ。

 そりア解るネ。綱四郎は反抗的に美和に恋情を燃やしてゆく気持も解るヨ。然し、腰元さん(新人・立花宮子)に対する兵介役の考え方は、どう思う。

雷蔵 それは、兵介は真面目な常識的な男だから、同藩の重臣の娘だし、同じ若殿に仕える関係から自然に好意を持ち、愛情をも感じて来るのだと思うネ。