たまにはゴテると

記者: きのう(八月二十九日)は、雷蔵さんのお誕生日でしたね。おめでとうございました。

雷蔵: ありがとう。友人が四十人ぐらい集って大騒ぎやった。

寿美: 若いかたが、たくさん見えてましたね。

雷蔵: ぼくの友だちって、ハイティーンが多いんだ。あなたと入れちがいに、橋君(橋幸夫)が帰っていったでしょ。彼もハイティーンだし、琵琶湖のホテルで知り合った高校生もいるし・・・。若い人って、考えが純粋で、感覚もするどい。それにアダ名をつけさせると、実にうまい。(笑)

寿美: 楽しいでしょう。

雷蔵: 本名は知らないけど、ニックネームはすぐ覚えちゃった。(笑)ちょっと小柄だなと思うと、ちゃんと「スモール」とついてる。森山って男の子はさっそく「加代子」だ。(笑)ズバリで気味がいいよ。寿花さんのアダ名は?

寿美: あたしは、「ゴテ松」っていわれてるんです。(笑)年中ブーブーいってゴテるからでしょ。

雷蔵: 本名は松平節子さんだし・・・なるほど「ゴテ松」とはうまいこというな。(笑)しかし、芸能界ってところは、ある程度ゴテるのがいいんですよ。メチャクチャを言っちゃいけないけれど、筋の通ったことなら、いつかは周りで認めてくれる。「あいつはうるさいぞ」っていわれるほうが、トクですよ。(笑)

完全なる女

雷蔵: 寿美さんと一緒に仕事をするのははじめてだけれど、前から、あなたのファンでね。この間の「華麗な千拍子」も見たし、宝塚の「赤と黒」なんか、三、四回見たかな。

寿美: わざわざ京都から、きてくださったの?

雷蔵: もちろんですよ。

寿美: それはどうも(と、たっぷりの笑顔で頭を下げる)。もっとも、私だって宝塚では、劇場のすぐ隣に映画館があるから、稽古が終ったら、ドカドカっと見にいくんです。

雷蔵: そっちは、ひまつぶしだけど、わたしは、わざわざですよ。(笑) 

寿美: きのうも「鯉名の銀平」を見てきたわ。音楽はしゃれてるし、テンポも早いし、おもしろかったわ。

雷蔵: 「華麗なる千拍子」を見にいったときは、明石(照子)さんが、客席に下りてきて、膝の上へのっかってきたからびっくりしたよ。(笑)

寿美: あのまえの月までは、私があの役をやってたんです。♬〜あたしのこと、好きですか、きらいですか・・・といいながら舞台からおりていくんですけど・・・残念でした。(笑) それが、急に映画で、ご一緒に仕事をするなんて・・・。

雷蔵: こんどで二本目ですか、映画に出るのは?

寿美: 六年まえに、東宝で「水着の花嫁」ってのを撮って以来ですね。しかも、こんどは、いきなり「新源氏物語」で、藤壺の役でしょ。男役が専門みたいな私ですから、みんな、びっくりしたらしいですね。

雷蔵: そのへんが、永田雅一プロデューサーのえらさなんだ。うちの社長は、パッと人の意表をついて、なにが出てくるかという期待をもたせるわけですよ。よその会社がやれないようなことを、ポンとやるあたりの映画青年らしさが好きだな。しかし、男役やる人ってふだんでも男装してるけど、寿美さんはどうなの?

寿美: ふだん男装するってのが大きらいなんです。

雷蔵: それはおもしろいな。こうして見ていると、たしかに、完全な女ですよ。しかも大へんにエレガントな・・・。(笑)