現代劇あれこれ
本誌 市川雷蔵さんも、勝新太郎さんも、昨年度の活躍は、めざましいものでしたし、中村賀津雄さんも、木下監督の「太陽とバラ」で、素晴らしい演技をみせて、時代、現代兼用でゆける新鋭スタアとして、益々将来を嘱望されていますから、今年はこのお三人に、充分あばれて頂きたいものです。
今夕この三スタアに集って頂いたのは“今年こそ僕等はあばれるぞ”といったようなテーマで、活溌にお話をして頂きたいとおもったからです。
雷蔵 賀津雄ちゃんは、最初、この座談会は、大人相手だから嫌だっていったんだって−
賀津雄 ああそうだよ、大人相手じゃ恥かしいもの−
勝 それじゃあ、子役相手なら恥かしくないの。(笑)
賀津雄 その方が気が楽だね、どうも大人は苦手だよ。
雷蔵 おおいやに敬遠されてしまったね。(笑)
勝 「太陽とバラ」は、ほんとうに、よかったね、現代劇はどう・やりよかった。
賀津雄 そりゃあ時代劇より身体は楽だけれど、演技的には神経を使うね。
勝 そりゃそうだろうな、だが賀津雄ちゃんなど、現代劇にすうっと入ってゆけるからいいが、僕など暮に「信号は赤だ」というギャング物を撮ったが、中々すうっと入ってゆけないで困ったよ。
賀津雄 僕だって同じだよ。世間からは「太陽とバラ」のあの役はなんだかんだといわれているが、僕からみれば、時代劇臭がぬけ切れなくて嫌だなあと思ったよ。
雷蔵 でもあれだけ君のいい所を引出して貰えば文句はないよ。
勝 ファースト・シーンなど一寸したジェームス・ディーンだったね。木下監督はこわかった?
賀津雄 こわかないよ、自由に芝居をさせて呉れて、急所だけを押さえるといった調子で、僕など木下先生だから、あれだけやれたけど、まだ現代劇には自信は全然ないね。
雷蔵 木下監督に叱られたことはあった?
賀津雄 叱られたことは一遍もなかったが、一寸にらまれたことはあったな。
勝 どんな時に−
賀津雄 それはいえないんだ。
勝 どうしてさ(笑)
賀津雄 絶対いえないね、僕の演技上の秘密なんだから−(笑)
雷蔵 大げさだね、しかし勝ちゃん余り追求しない方がいいよ、賀津雄ちゃんはね、みかけはごらんの通りおとなしい坊ちゃんなんだが、底には中々筋金が通っていてね、嫌だといったら、とことんまで嫌だといい通す芯の強い所を持っているんだね。そこが恐い所さ。
勝 うん解るね、兎に角「太陽とバラ」で、賀津雄ちゃんの株が大分あがったって、東京のジャーナリストがいっていたよ。今年売り出すのは、賀津雄ちゃんだろうって。
雷蔵 そんなこと誰がいったの。
賀津雄 僕は知らないね。それだから大人は嫌いだっていうんだよ。すぐひやかすからな。
雷蔵 ごめん、ごめん、今の前言は取消にするよ。(笑)
勝 賀津雄ちゃん、お正月はどうだった。