お正月のプラン

賀津雄 暮は二十日から二十五日まで、赤倉へ行ってスキーをして、正月は元旦から五日間、国際劇場へ出て「殺陣」をやったよ。勝ちゃんは、どこへ行った。

 九州へのあいさつ旅行で、旅から旅への渡り鳥ってとこだね。それも面白かったよ。雷ちゃんはどうした。

雷蔵 僕は今年は念願が叶いまして、元旦は鳴滝の家で静かにお屠蘇を祝って、二日から玉造温泉へ行って静養して来ました。誠に結構なお正月でした。

本誌 この辺で本年度に於ける三スタアのスケジュールや抱負を語って頂きたいと思います。

 賀津雄ちゃん、何やるの。

賀津雄 木下監督の作品に出して頂く約束があったのですが、九月に延期になったので、京都撮影所で一月中旬から一本かかる予定ですが、まだ本をみていないので、どんなものか知りません。

雷蔵 お母ちゃんは、もう知っているんじゃない。

賀津雄 そうかも知れないね。

 賀津雄ちゃんは全部お母ちゃん任せなの。

賀津雄 今の所はね、それでいいんだよ、ちゃんと考えてやってくれるんだから、その方が楽だよ。春の京都の大作として、大曾根監督が去年の「京洛五人男」式のオールスター・キャスト物をやるので、僕も出るらしい。

雷蔵 僕も勝ちゃんも、吉村監督の「大阪物語」を正月から撮っているし、僕は「朱雀門」でにも帥の宮(有栖川宮)役で、大作かけ持ちで大多忙だよ。

 僕は「大阪物語」で、鐙屋の忰市之助の役で出演しているんだが、純大阪人の役なので、大阪弁を使うのに大苦労しているよ。昔のぐれん隊で、極道息子の標本みたいな役なので、どうしたら極道らしく見えるのか苦心している。

雷蔵 勝ちゃんの場合は、かっこつけですよ、地でゆけばいいんでしょう。そんなに苦心したら、どんなことになるんだろうな。

 雷ちゃんの毒舌には負けるね、雷ちゃんの番頭役とは、全然顔を合わせないから淋しいよ。

雷蔵 僕の番頭役、封建的な世の中を、ただ従順に生きてるだけの、かよわい、役に立たないおとなしい男なので、僕にはやり易い役だから、別に苦心する所もないが「大阪物語」に出演していると、成程銭というものは、何よりも大切なものだ、僕等ずいぶん無駄な金をつかっているなと考えさせられるね。