無駄使い防止映画

勝　ほんとだね。封切りされたら観客も、金の大切なことを痛感するだろうから、無駄使い防止映画になりそうだね。（笑）

雷蔵　僕は現代劇を一本撮ってみたいんだが、現代劇に出る場合は、撮る前に社会見学を充分したいと思うな。市電に乗り、デパートへ行き、街を歩き、貧民窟まで行って、街に住む人々の実態をみてから仕事にかかりたいな。

勝　それは理想だがね！雷ちゃん、それは仲々実行出来ないよ。僕なども、そんなことをしたい方で、この間も大阪から京都へ帰る時、国鉄電車に乗ったら、女学生にみつかってしまってね、京都へ着くまでサイン攻めに会って、ひどい目に会ったよ。

賀津雄　女学生ってのは、自分だけながめていればいいのに、すぐみんなに知らせたがる傾向があるんで困っちゃうな。

雷蔵　勝ちゃんはそうだろうが、僕などは、その点割に人にわからないから得なんだ。賀津雄ちゃんは東京で電車へ乗ったかい。

賀津雄　モチだよ。大船は送り迎えの車など出ないんだよ。だからみんな電車だよ。平気だぜ。

雷蔵　うらやましいね（大笑）

勝　さっき「映画ファン」から出されてテーマに、さっぱり触れてこないが、僕など大いに暴れたいんだが、映画の世界はいくら一人力んでも独り芝居は出来ないからね、雷ちゃんなど、どうすればいいと思っている。

雷蔵　僕はね、結論は、いい企画と実力のある監督に、自分の持つ長所を引出して貰うことが、演技者としては、一番幸福なことなのだから、その幸運をつかむために、あらゆる努力を払うべきだと思うんだ。だから僕たちから自分い合うと思う原作があったら会社へどしどし提出しておくうだね。

勝　それは良いことだろうが、大てい企画審議会か何かで、握りつぶされたり却下されたりするのが落ちだろう。

雷蔵　そんなことにへこたれてはいけないんだ。あとからあとから企画作品を提供して置くんだね。気長に待てば、その中から芽をふいて来るよ。兎に角僕等は暴れたいのだし、暴れさせて頂きたいのだから、この際「映画ファン」の読者にお願いして置きたいことは、僕なり、勝ちゃんなり、賀津雄ちゃんなりにぴったり向くという原作がみつかったら、どしどし教えて頂きたいものです。僕等の暴れられる原動力をみなさんから提供して頂くことが、何よりありがたいことです。

勝　僕も大賛成だな、読者のみなさん頼みますだね。

雷蔵　僕等が大いに暴れるにしても、身体は大切だから、おたがいに健康を守らなければいけないな。賀津雄ちゃんは、スポーツは何をやってるの。