星に強いふたり

錦之助: ケンカといえば、あん時おもしろかったなあ。

雷蔵: そうやそうや、あれはなんの時だったかいな・・・東京の渋谷でやろう。

錦之助: 二人が招待されて酔っぱらってさ、例の慣れ合いケンカを始めた。

雷蔵: どないいうのかいな、錦ちゃんとはくされ縁や、ホンマに引っぱたいたり・・・。

錦之助: だから、招んだ人がびっくりしちゃって(笑)

雷蔵: あれ、真剣な顔して止めに入ったんや、罪なことをしたもんや。

錦之助: な、こんどまたどっかでやろうか(笑)

雷蔵: もうイカン、ここで発表しちゃった(笑)錦ちゃん、もういちどいってみい。

錦之助: 何がさ。

雷蔵: やろうかって、いってみい・・・。

錦之助: やろうか・・・あ、こいつ・・・。

雷蔵: アハハ・・・やっぱり、まだなおっておらんな。ラ行の発音ちとおかしいぜ(笑)

錦之助: うるさいぞ大映は・・・(笑)

雷蔵: 当り前や、錦ちゃんはな、ぼくのライバルや。

錦之助: お、雷ちゃん、それ本当かい?(笑)

雷蔵: そやがな、そりゃ役者の柄もちがうし、友達だがな、大きな意味で錦ちゃんをライバルと思うとるぜ。つまりだ。錦ちゃんをそれだけ尊敬しとる・・・(笑)と、いうわけや。(笑)

錦之助: こわい、こわい(笑)

雷蔵: ほんまやで。それにな、君はな、近頃ぐっと顔が大人になって来た・・・二枚目になって来たよ(笑)

錦之助: 雷ちゃん、どうや寿司食わんかね(笑)

雷蔵: そこでだよ、まぜっかえしたらあかん(笑)そうだな、寿司より、ぼくは朝めしがいい、また泊りに行くわ。

錦之助: そういえば雷ちゃん、家のご飯好きだね。

雷蔵: お世辞でなく、君んとこの朝めし、それもな、おみおつけ、おしんこがうまいんだ。東京に行くやろ、ホテルに住むせいか、とくにそう思ってね、ついよっちゃうんだよ(笑)

錦之助: なんだ、よくわかったよ。こんど女中にいっとくよ、雷ちゃん来たらおみおつけタライに入れて、出してあげろ(笑)

雷蔵: そしたらついでにな、おしんこを洗面器に入れて出して欲しいいうたってな(笑)

錦之助: アハハハ・・・どうして雷ちゃんと話してると、こうなっちゃうのかな。

雷蔵: ウマが合うんやろ、きっとな、時に錦ちゃんはこんど二十七になるんやろ。

錦之助: うん。君は二十八になるんだよ(笑)

雷蔵: そりゃ大変だ、サル年だよ。サル年はな、ゴウのサルといってな、星が強いんだ、君は出世するぜ、太閤秀吉がゴウのサルや。錦ちゃん、どないする・・・。

錦之助: 当るのかい、ほんとに・・・。

雷蔵: うん当る、ぼくな、ヒツジなんや、前に占いに見てもらったら、あんたは養子に行くといわれた、ホラ見いな、ぼくはちゃんと市川家に養子に行っとる羊男は金で買えという位いでな、これもいい星なんや(笑)

錦之助: なあーんだ、それがいいたかったんだろう。