気の合った者どうし、気楽に雷蔵映画を見ようというので、「朗雷会」という会にかえた。雷蔵のことについての問い合せには何でもこたえます、という意味がこの名称にはこもっている。しかし、雷蔵の後援会とは一線を劃している。スクリーンをつうじての雷蔵と実際の雷蔵と接していた雷蔵ファンとの間には、どうしても肌のあわぬ面もあるということだろう。

 石川は、雷蔵を映画界でもっとも才能のあるスターだったと思っている。雷蔵の内面には、人を魅きつける何ものかがあった。それがスクリーンからナマで観る者に伝わってくる。雷蔵に確かめるすべのないまま、観客は無限に雷蔵と会話ができる。そこに雷蔵の不思議な魅力がある。石川はゆっくりと、しかし一語ずつ確かめるように雷蔵映画について語る。

 「今年は二十三回忌にあたります。それを記念してのキリンプラザの上映会では九日間で延べ六千人ものファンが観にきました。女性ファンが多かったのが特徴です。『薄桜記』がもっとも人気があって、つづいて『眠狂四郎』、『大菩薩峠』、『斬る』、『剣』といったところです。むろん文芸三部作といわれている『炎上』、『破戒』、『弁天小僧』は圧倒的な人気です。『炎上』や『破戒』を観てファンになった人が多いんです」

 新しいファンがふえているともいう。『炎上』のあの宗教学生、破戒の教師、雷蔵の目はたしかに役になりきっていた。まるで主人公そのものであった。こういうスターが日本にいたなんて・・・と雷蔵を知らない世代が、石川のもとにも、もっと雷蔵について教えてほしいと訴えてきているのだ。

 

 この七月十七日は雷蔵の命日だった。だがこの日は祗園祭、そのため七月十三日に雷蔵忌をファンの有志で開いた。三隅研次監督の『編笠権八』と『千羽鶴秘帖』が上映された。雷蔵の死後、初めての上映であった。京都フィルムにポジがあり、そのフィルムを焼き起こして、つまりニュープリントで上映したのである。雷蔵ファンにとって、ニューフィルムには新たに生き返った雷蔵という意味がこもっている。