時代劇は企画が貧困だと云われていますがこの点は?
橋蔵 我々時代劇のスターは勿論だが、脚本と監督さんと会社の方針が一致した時に
    あらゆる意味でいい作品が出来ると思うね。
雷蔵 ウンウン、我々役者の責任もあるけど、まず第一に云える事は、製作企画者が
    題材の持ち廻りをしているということだと思うな。小さな範囲の中から題材を見つ
    けようとするから、どうしてもヤキ直しになってしまうんだな。もっと高所から見て
    視野を広げる必要があると思うな。
橋蔵 ウチでも、会社は営利会社だからこれで行けるという目安がなければ資本をお
    ろさないし、こっちもあまり飛躍した考えの作品は急には望まないけど、ファン
    層をじっくり考えて、徐々にレベルを上げようとしていると思うな。だから、そうな
    れば、おのずから取材の範囲も広がって、題材にも巾が出て来ると思うな。
雷蔵 企画に巾を持たせる事が必要だね。ライトコメディもひとつの方向だね。セリフ
    や人物の勘定を現代的にする事もひとつの方向だと思うんだ。だけど、それが
    時代劇の前進だとは限らないと思うんだ。
橋蔵 要するに脚本だね、問題は。

阿井さん青山さんを交えて宮川撮影監督と打合せ中

セットの前でファンに囲まれて

雷蔵 シナリオのオリジナリティがないっていう事だね、シナリオは映画のために創作し
    なければならないんだよ。それが、小説のヤキ直しばかり・・・。映画化翻案と違う
    んだからね、脚本家というのは・・・。
 悪口が多くなってしまいましたが、時代劇ならではの魅力とこれからの時代劇の
進む方向について!
橋蔵 少なくとも僕は「テンポ・情緒・迫力」の三つえお守って行くべきだと思うんだ。僕
    の映画では絶対に注意しているけどね。
雷蔵 橋蔵クンらしいね、東映の映画はテンポが早いし、立廻りには迫力はあるし、  
また、君はイロ男だから情緒はあるし・・・(笑) 
橋蔵 イヤイヤ(笑)この三つだと思うな、エッセンスは!    
雷蔵 映画はテレビにくわれているっていうからね、狙いはテレビに負けないもの、って云う事だね。中途半端はいけない。
橋蔵 テレビにはそうとうやられてるのかな?エッ、テレビで映画をやるとなると毎日変るのかな?
雷蔵 そんな事になったら大変だよ、この七倍も忙しくなる。(笑)    
橋蔵 死んじゃうね、これ以上忙しくなったら・・・(笑)
雷蔵 テレビ攻勢の折から、グッとした心理劇か、雄大な感じを出すんだね、場面に・・・。
橋蔵 そうだね、テレビでもワイドやカラーが出来てるだろうから、映画だけがワイドのカラー作品だといって安心もしていら
    れないね。
雷蔵 どんどんロケに行く事だね。決闘シーンにしろ、ラブシーンにしろ、大自然の中でテレビでは味わえない雰囲気を出す
    事だね。
橋蔵 それには、京都から外へ出て行くべきだ。京都はもう撮りつくしたよ。
雷蔵 ロケは今後すべて二、三泊にすべし。(笑)
橋蔵 今ね、権八をやっているんだけど、むずかしいね、口や目を動かすにも、ひとつひとつがこわくなって来ちゃった。
雷蔵 『濡れ燕・くれない権八』だね。ずい分ヒネた権八だなア。(笑)
橋蔵 ヒネゴンだね(笑)ヒネているのは百も承知だけど・・・ハイカラな権八は出来ないよ、人間性の問題だ。(笑)