ことしのシーズンのはじめだったかな、とにかくまだ寒いころだった。大映の若手チームが斎藤寅次郎さんのチームと試合をやった。このときなんか、応援にかけつけた女優さんの前でさ、ぼかァ、堂々と三塁打うぃかっとばしてさ、相手方をびっくりさせたもんだ。斎藤センセイも「雷ちゃん打つんやな」という始末。試合前にぼくがバッター・ボックスにたつと「バッターはいいカモやでェ、カカシや」なんてヤジをとばしていた連中もいっぺんでシュンとなって、ぼくをみなおしたから愉快だったよ。とにかくものごとはやってみないとわからんもんだ。

 先日も撮影所の大道具さんたちとやったとき、ぼくァ、ランニング・ホーマーをかっとばした。あんまりスコン、スコンと打つので、勝新太郎君が秘ケツを教えろという。教えようと思ったってこればっかりは、どうも口じゃあいえない。ボールがとんでくると、スッと無意識にバットが出ていくんだな。いうなれば無念無想なんだよ。つまり雷蔵流のバッティングは説明できないんだ。

北上弥太郎さん、大川橋蔵さん、雷ちゃんの三巨頭?会談