由原木 昔エロ・グロ・ナンセンス時代というのがあって、そのときはえらく世間が不景気だったそうですねど、いまがちょうどそれと同じ現象なんでしょうね。そうしたアクの強い作品が多い中にあって、雷蔵さんの作品は、いわば正調娯楽作品といった印象を受けるんです。

雷蔵  わたしにも、もっと男くさいものをやったらどうかという話があったのですが、いくらそれが流行でも、自分に似合わないものはやれませんからね。

由原木 ぼくは雷蔵さんのセリフ回しに、このごろ魅力を感じだしたんですよ。なんといったらいいのかな、悠容せまらず・・・とでもいうのかな。あの独自なセリフ回しを聞くと、試写室の中で、ひとりで思わずニヤニヤしてるときがあるんですね。自分でも気がつかない間に・・・。それというのもアクの強い作品をゲップが出るほど見せられているので、ホッと安心した気持で見ていられるからでしょうね。

雷蔵  そうですけ。そういう見方もあるんですね。わたしとしましてはですね。あまりにもアクの強いやくざものや、エロ映画ではご家族連れで映画館へ−、というわけにはいかないでしょう。ですから、すくなくとも、自分の作品だけは、ご家族連れが安心して見にこられるものにしたいと思っているんです。

由原木 なにも教育映画を作っているわけではないんですから、ほどほどのエロや暴力ならあってもいいけど、それも表現で美しくもなれば、見苦しくもなるので、そのへんの勉強は、監督さんにみっちりやってもらいたいですね。いずれにしても映画は娯楽なのだし、ときには成人向きがあってもいいけど、大体がいつでも家族連れで見られるようでなければ、いけないんじゃないかな。