小島正雄 おしゃべりジャーナル

 

 雷蔵さんは、一年に一、二回東京へふらりとやってくる。こまかい仕事はあるだろうが、いわゆる遊び。東京の空気を吸いにくるのだという。その雷蔵さんに今回はご登場ねがった。

 よく雷蔵さんは女ぎらいだ、といわれるが・・・もし、そうだとすれば、どうしてソウナノデアルカ。おはなしは、まずそんなところからはじまった - 。

 

桃色のカスミがかかると


小島: 雷蔵さんは、よく女ぎらいといわれてますね。どうなんですか、という質問はタイヘン失礼ですから、これについていかなるご感想ありや、とおききしましょうか。(笑)

雷蔵: 女ぎらい、というのはないと思いますけれど、あまり興味がないといえるでしょうね。といっても、この答え方にも、ウソとホントが半分ずつ。(笑)

小島: 女性に惚れないほう?

雷蔵: あまり惚れないほうです。(笑)

小島: そういえば、お仕事のほうでも、惚れる役って、あまりありませんね。ぐっとドン・ファンの匂宮とかありましたけれど。

雷蔵: まあ、女の人にはよく惚れられるけれど、惚れる役はやったことないですね。どういうことなんでしょうかね。

小島: それは、ぼくのほうできくことでしょう?違いますか。(笑)

雷蔵: アッハハハ。

小島: 実生活のほうでも、よく惚れられるほう?

雷蔵: それもない。(笑)

小島: ちょっとね、それはおかしいですよ。そんなわけはないと思うが・・・(笑)

雷蔵: ふだん、ぼくは女の人といっしょにいると、堅苦しくて、冷たいそうですよ。よくそういわれます。

小島: 垣根があるんじゃない?バリケードが・・・デモ隊みたいな。(笑)自分のペースを乱さないんでしょう、あなたっていうお方は・・・。(笑)

雷蔵: なにか冷たいそうです。・・・ぼくの性格としてですね、ふつう友だちとして遊んだり、しゃべったりしているあいだは、おもしろいのです。自分自身としても・・・それが、なにか恋愛感情みたいなものが芽生えると、とたんにおもしろくなくなるのです。

小島: その場合、どっちから芽生える?

雷蔵: どっちからともなく芽生える場合があるのです。ぼくのほうからでも、彼女のほうからでも、ぼくは意識しないけれど、女性がいうには、ガラリと変わってしまう、というのです。

小島: いままで、というか、そのおもしろい雷蔵さんが、俄然、おもろそうないおひとになる。(笑)

雷蔵: それまでは、やたら冗談いったり、バカなことをいって、おもしろいね、雷蔵さんっておもしろいじゃないの、とかなんとかいっているのが、恋愛的な、桃色のカスミがボーッとかかってくると、筋硬直症にかかってくる。桃色性筋肉硬直症。(笑)

小島: こりゃあ、困った。(笑)赤面恐怖症というのはよくきくけど、桃色性筋硬直症っていうのは、はじめてだな。重症ですか。(笑)

雷蔵: 重症、軽傷の別なく、いつも、同じような症状を呈するのです。(笑)

小島: ほんとに困ったおひとだ。(笑)そろそろ結婚してもいいお年ごろでしょうけれど、二十八でしょう、いま?適齢期でもあるし・・・しかし、その桃色ナントカ症じゃ、ヨワイですね。(笑)

雷蔵: 結婚のことはですね。よくいろいろのひとからもいわれるんですが、まだ二十八ですからね。

小島: まだといういい方もありますし、もうという考え方をするひともあるでしょう。