日曜日に会いましょう
映画監督もやりたい


市川雷蔵さん

 「カブキに客が入らないって、それは当たり前ですよ。芸術だのといって、大衆から遠ざかって、特定の人しか分からんのではね。こんどは私が中心だから、映画ファンが半分ぐらいいるでしょう。それでは九百何十円かかる一等席は高いや。映画なら五回以上は行けるものな」とこわいものなしのズバリとしたいい方。この公演は大成功なので、松尾千本土地社長も、永田大映社長も毎年一度の雷蔵の舞台を考えているのだが - 。

 「僕は出ないつもりです。混dのは永田社長とおやじの昔の約束を果たしたわけで、これからは自由なビジネスです。実現しないとはいえませんが、それよりも僕は映画の監督でもプロデューサーでもやらせてほしい」と大きな望みを打ち明けた。

 こんどの公演は映画で好評だった『ぼんち』と、親子で出る『浮名の渡り鳥』などで、その劇中劇が二人の「鈴ケ森」である。朝十一時に楽屋入りして、夜十時まで休みなしの舞台。二十分の幕間が最高というからきつい。注射をうち、食事をかき込みながら。しかしまだまだ若さのゆとりがみえる。