毛虫のプレゼント

和子 山本さん、「木曾義仲」のスチール凄いわネ。

山本 山猿みたいで汚ないでしょう。私はね、いわゆる女兵でしょう。木曾から狩り出されてきた女奴隷みたいな役ですもの。あの撮影で蛙をつかまされたのよ。冬眠しているから、目が半開きなの。衣笠監督に「蛙がこわくて撮影が出来るかッ」って怒られてやったんですけど、涙が出たわ。今でもあの蛙の感触が残っているみたい。

雷蔵 僕ら、男性でも、蛇や蛙をさわるのはいやだね。僕はイナゴでもなんでも飛んでくると逃げる方だからね。

伏見 雷蔵さん、こんど浅草へ蛇料理、食べにゆきましょう。(笑)

若尾 私、蛇より毛虫がイヤだわ。

石浜 毛虫、ムカデ、青虫みんな気味わるいよ。

伏見 東千代之介さんは、世界中で一番こわいものは、鶏の足なんですってサ。

和子 変なものがこわいのね。私平気だわ。

伏見 東さんときたら、鶏の足の話をしただけでも、青くなるんですよ。

雷蔵 大体、伏見君は、ひとの嫌がることをやりたいという、残虐性を帯びているんだ。(笑)

和子 私、毛虫や青虫なら可愛いいわ。白い毛虫がいてね、とても可愛いいの。お家へもって帰ったら叱られるし、リボンを結んで箱に入れてね、オートレースの人に頼んで、京都へ送ったのよ。林成年さんのところへ。

山本 まア、成年さん驚いたでしょう。

和子 丁度「新平家物語」で雷蔵さんとご一緒だったでしょう。あの時、完成記念のオートレースがあって、その人に頼んだの。

石浜 へえー悪趣味だなア。僕なら、そんなプレゼント、送りかえしてやるよ。蛇を入れて・・・。(笑)

山本 伏見さん、現代劇に出るお話ありますの?

伏見 ありません。あっても僕はいかないです。自分に合わないことがわかっている。

雷蔵 僕はどう思う?あなたの占いでは?

伏見 雷蔵さんは合うんじゃないですか。

山本 えらいわ。そういう風に自分というものをはっきり押えてることって大変だと思うわ、雷蔵さんは現代劇に出る気持あるんでしょう?

雷蔵 僕は出たい。何か企画を考えろと云われれば考えますよ。

若尾 最近の時代劇で、人情物って割合少ないのね。昔「鶴八鶴次郎」(長谷川一夫、山田五十鈴共演)見たけどああいうの、いいわ。

石浜 「湯島の白梅」なんかもそうですよね。純然たる時代劇とは云えないけど。

若尾 そう、そう、「湯島の白梅」みたいなの、いいわね。

山本 おおきに。(笑)

雷蔵 今夜は、とにかく山本さんにさらわれた形だよ。

伏見 明治ものはいいですね。雷蔵さん、明治ものはどうですか?

雷蔵 出たいと思うね。

伏見 僕もやって見たいと思います。

山本 明治ものっていうと、どういうもの?

伏見 ざん切りもの・・・。