- スター近況 -

 石原裕次郎さんが、『幕末太陽伝』以来、すっかり時代劇嫌いになってしまった理由のひとつに、メーキャップに時間がかかる、というのがあります。九時開始ならば、少くとも八時迄には撮影所に入り、カツラをつけたり、ドーランをぬったりしなければなりません。裕ちゃんの場合は、現代劇と比べものにならない位に長いこのメーキャップの時間がいやだというわけです。ところが、「薔薇いくたびか」で一寸ばかり現代劇に出演したことはありますが、現在撮影中の『炎上』が本格的現代劇出演という市川雷蔵さんは、裕ちゃんの場合とは反対に、時代劇の長時間にわたるメーキャップに慣れてしまったおかげで、現代劇のメーキャップは、短くて簡単で、まことに具合がいいと喜んでいます。

 「十分もあれば出来るものね、現代劇って楽だねぇ」

 とニヤニヤしているわけです。撮影所まで歩いても十分とかからない鳴滝にお住いですので、朝はまことに快適。「現代劇はワンダフル」といったところです。

 ひまがあれば、原作探し、撮影所でひまが出来れば、企画室に行って、企画の方達と面白い作品、良い作品を作ろうと話をする程、自分の作品には意欲的な雷蔵さんのことですから、今度の『炎上』にも、並々ならぬ意欲をもやしてぶつかっています。頭を丸坊主にした事でも、その激しさがわかろうというものです。

 スタッフの方達や、市川崑監督と、何やら熱心に語る雷蔵さんの姿を最近見かけます。どんな作品によらず、自分が納得しないと、演技しないという傾向が人一倍強い雷蔵さんですので、慣れぬ現代劇の演技については、なおいっそうのことなのです。自分が納得するまで!これが演技上の雷蔵さんのモットーなのです。

市川崑監督と