千姫

1954年10月20日(水)公開/1時間35分 大映京都/カラー・スタンダード

併映:『こんな奥様見たことない』(仲木繁夫/船越英二・伏見和子)

製作 永田雅一
企画 辻久一
監督 木村恵吾
脚本 八尋不二
撮影 杉山公平
美術 伊藤熹朔
時代考証 甲斐荘楠音
照明 岡本健一
録音 大角正夫
音楽 早坂文雄
助監督 多田英慶
スチール 小牧照
出演 京マチ子(千姫)、菅原謙二(湯浅新六)、三田隆(本多平八郎)、東山千栄子(淀君)、大河内伝次郎(徳川家康)、山形勲(坂崎出羽守)、新藤英太郎(本多正信)、峰幸子(娘おちょぼ)、伊志井寛(徳川秀忠)、花柳武始(松井主税)
惹句 『恋は女のいのち・・・・恋することも許されぬ千姫の悲劇に全女性の涙を呼ぶ』『一生に一度でいゝ、美しい恋がしたい千姫は夜毎その悲しい願いに泣いた
受賞 第9回毎日映画コンクール(日本映画大賞):色彩技術賞 杉山公平他・大映作品「千姫」の色彩技術関係者

 映画出演三作目。この作品は、秀頼の好演と、清新な印象というので後の『新平家物語』起用の根拠になった。

 デビュー間もないのにかかわらず、折り目正しく、凛々しい豊臣の遺児を演じ、出番は少ないながら映画出演以来、初めて新聞評でほめられた。

★千姫出演ばなし★

 七月に大映で『花の白虎隊』を撮りましてから、ズーッと映画に出ていましてスッカリ御無沙汰してしまいました。十一月には多分舞台へ出る事になりましょう、十一月からあとはしばらく舞台の予定です。『花の白虎隊』で映画一年生になったわけですが、その後『幽霊大名』、こんどの『千姫』と出まして大分慣れてまいりました。舞台と勝手のちがうことも納得出来ましたし、これからも舞台と映画の二筋道で、ミッチリ勉強したいと思っております。

 『千姫』という映画は、皆さまも御存知のように、日本歴史でも有名な悲劇の女主人公を描いたもので、大阪落城を背景に、坂崎出羽守のエピソードや、本多忠刻とのロマンスがあり、これまで随分芝居にも映画にもなりましたが、こんどは木村恵吾先生が今日的な見方から描かれたもので、しかもすぐれた性能をもった大映カラーによって製作されるのですから、大いに御期待願えると思います。

 私は千姫の最初の夫であり。大阪落城の悲劇の主、豊臣秀頼を演ります、是非御覧下さいまして、何とか御叱りをいただきとう存じます。大河内伝次郎、伊志井寛、東山千栄子といった映画、新派、新劇のお歴々も出演していられますし、一同張切っております。

 舞台へ御無沙汰しているうちに、播磨屋のおじさんと、豊田屋のおじさんがつづいて歿くなられ、鶴之助君の脱退や、つくし会メンバーの笹太郎、冠十郎、小金吾三君の映画界入りなど、いろいろ出来事がありまして聞くたびおどろいています。これからの関西歌舞伎も種々の面で変った動きを見せましょうし、父も幸い健康なので、この際頑張ってほしいと思っています。

 次の映画は美空ひばりちゃんと『お夏清十郎』の予定ですが、又舞台からお眼にかかる日を楽しみにしております。(後援会誌「寿海」より)

[  作 品 解 説  ]

 永田雅一の製作になるイーストマン・カラーの時代劇で、今後は大映カラーと称する。『花の白虎隊』の八尋不二の脚本を、『愛染かつら』の木村恵吾が監督する。撮影は『死美人屋敷』の杉山公平、音楽は『君死に給うことなかれ』の早坂文雄の担当である。出演者は『浅草のよる』の京マチ子がヒロインの千姫を演ずる外、『月よりの使者』の菅原謙二『花の白虎隊』の峰幸子、三田隆、花柳武始、小町瑠美子、市川雷蔵、『鉄火奉行』の大河内伝次郎、『三州吉良港』の山形勲など。(キネマ旬報より)

 淫蕩な女として今日まで伝われてきた吉田御殿の女主人千姫。彼女の生涯は、はたして伝えられるようなものであったか、七歳にして豊臣家に人質として、妻として秀頼の下に嫁し、落城と共に家康の下に帰り、再婚の夢も潰えた美女の宿命的な悲劇。そこには金でも、権勢でも及ぶことのない女の命の慟哭があったのだ。

 生涯にたった一度でいいから、真実の恋をしてみたかったと絶叫する千姫の心には全女性が泣く、大映得意の総天然色映画である。

 ←クリックすると中味が見られます

★グランプリの栄冠に輝く永田雅一社長総指揮のもと、世界に問題を投げかけた大映カラー・総天然色で描く、戦国美女の悲恋絵巻です。

★製作は、前述の通り永田社長自ら陣頭指揮に当り、企画は時代劇のベテラン辻久一が担当した。

★脚本は、八尋不二のオリジナル・シナリオで、木村恵吾監督が久々の時代劇演出に、快心のメガホンをとり、撮影は『地獄門』の杉山公平キャメラマンが再び鮮烈の妙手えお駆使した。

★録音は老練大角正夫、照明は天然色用ライトを使用して岡本健一。

★美術は舞台装置の第一人者『地獄門』『雨月物語』『山椒太夫』でなじみ深い、伊藤熹朔が当り、音楽は一作毎に新境地を開拓する映画音楽の鬼才早坂文雄が担当し、時代考証には斯界の長老甲斐荘楠音が薀蓄を傾けている。

★配役は悲劇のヒロイン千姫に京マチ子、千姫に男の真実を捧げて果てる湯浅新六(後に竹中新八郎)に時代初出演の菅原謙二が扮して新鮮なコンビの魅力を発揮し、これに併せて大河内伝次郎、三田隆、山形勲、進藤英太郎、石志井寛、石黒達也、杉山昌三九、東山千栄子の絢爛多彩のベテラン陣の競演。『花の白虎隊』に出演の市川雷蔵、花柳武始、峰幸子、小町瑠美子の青春時代劇スタアも轡を並べて、豪華異色の顔合せを展開、競演の火花を散らす。

★内容は、封建制下徳川家康の孫として生まれたが故に、数奇な運命をたどらねばならなかった千姫の悲劇的な宿命は、人間として生きる愉びも、女として、知る愛情も、すべてを失って行かなければならなかった−千姫御殿の愛欲に狂ったと思われている千姫の真実の叫び、即ち、女性の悲劇を絢爛豪華な時代的雰囲気を背景に、色彩美豊に描いたものである。(公開当時のパンフレットより)

−配役紹介2−

徳川家康 − 大河内傳次郎 徳川三百年の礎を築上げた初代将軍。孫娘、千姫可愛さのあまり坂崎出羽守に命じて千姫を救出させるが、その後出羽守より、千姫を嫁にとせめられて、困却する。
淀君 − 東山千栄子 豊臣秀吉の夫人で、千姫の夫、秀頼の母にあたる、男まさりの激しい気性の持ち主。元和元年、大坂夏の陣の戦に秀頼と一しょに、大坂城と共に、運命をともにする。
豊臣秀頼 − 市川雷蔵 桃山時代の栄華を一身に集めた太閤豊臣秀吉の遺子。十一才の時に七才の千姫を嫁に迎えるが、大坂城落城の折、城と共に運命を共にする。

 

[  略 筋  ]

 大阪夏の陣に於て、大阪城の豊臣一族はすべて城と運命を共にしたが、秀頼の妻千姫だけは侍女おちょぼの機転と、関東方の猛将坂崎出羽守、その家来湯浅新六らの働きにより、奇跡的に救出された。千姫は家康の孫であり、元々人質同然の生活をすごしてきたのだったが、この日家康が「千姫を救った者に姫を与えよう」と口走ったことで、出羽守は懸命に千姫を求めていたが、千姫はそれを頑強に拒んでいた。

 困じ果てた家康は、出羽守には領地を加増し、その隙に千姫を名門の青年本多平八郎に嫁がせようと考えた。無念の出羽守は、千姫の輿入れの行列に斬りこもうとしたが、逆にはばまれて、絶望の中に自らの槍を以て自決し果て、従者新六は何処となく姿を消した。だが晴れの婚礼を前に控え、花婿の平八郎は病死してしまった。

 それ以来、千姫は、吉田御殿の主として、美しい小姓たちをはべらして、日夜遊興にふけった。侍女おちょぼは、今では松坂の局と名を改め、伏見城勤番の青年旗本松井主税と恋を語らう様になっていた。だが真実の恋に見はなされた千姫の心は淋しかった。

 ある時、傀儡師に化けた秀頼の遺臣たちが、突如白刃を閃かして千姫に迫ったが、彼女の命を救ったのは庭番新八郎だった。この男こそ、かっての出羽守の腹心新六が、主の仇千姫の命を狙うための仮の姿だった。そうとも知らぬ千姫は、彼に思慕の情をつのらせ、ある夜彼を寝所に招いて愛の心を打明けた。今では劣らず千姫を愛していた新六は、果たして己が秘密を打明けるべきかに心が激しく動揺した。恋と復讐の板ばさみに悩んだ新六は、初めて知った真の心をあきらめた千姫が松坂の局と主税の恋をとげさせ自らは尼となった日、尼寺へむかう姫の行列の前で自殺して果てたのであった。( キネマ旬報より )

                                 千姫                   双葉十三郎

 大阪落城のとき坂崎出羽守に救いだされた千姫の物語は、いままでにも芝居や小説や映画で幾度となく繰りかえされているが、八尋不二脚本、木村恵吾監督による今回の一篇は、きわめて常識的な解釈で、ドラマ的に新鮮な魅力がまったく感じられない。人物の気持に無理がなく、大きな破綻もなくすらすらとまとめられている点はみとめてもいいが、同時に無味のそしりは免れまい。木村監督は今日までの諸作において京マチ子の官能的魅力をエゲツない方法で強調しようと試みてきたが、今回はその方針を一擲し、たいへん神妙な女性に仕立てている。吉田御殿の御乱行などもごくあっさりしたものである。それはむしろ慶賀すべきことであろうが、しかしそれならなにがハイライトかというと困るのである。とくに焦点がなく、物語を平板におしすすめているだけなので、前記のような、まとまりはいいがつまらぬ作品という結果になってしまっているのであるが、それは脚本や監督の罪ではなく、どうにもひねればい使い古された材料のでいであるかもしれない。これで色彩がなかったらもっと退屈したにちがいない。

 その色彩は御自慢の大映カラアで、場面によって相当ムラがるが、いい場面はすばらしくいい。ハイ・キイの場面が案外に不調であるが、夕暮の縁側とかラストのワン・ショットとか、褐色を基調にしたくすんだトオンの場面が非常にすぐれている。イーストマンカラアは青がつよくなる傾向があり、外国作品などでもひどいものが多く、日本でも他社の作品には実にきたないのがあったが、大映カラアと名乗る以上、この程度の水準から落ちないように今後も努力してほしい。

 出演者はいずれも適役といいたいところだが、菅原謙二がイタにつかずなんとなく頼りないのは主要な役だけに大きな弱点である。

興行価値:京マチ子の千姫というので期待を抱かせたが、出来は存外に平凡だから。むしろ美しい色彩の時代劇であることを強調したほうがいい。( キネマ旬報より )

←クリックすると拡大版が見られます!

YaL.gif (2580 バイト)

Top page