綱渡り見世物侍

1955年9月6日(火)公開/1時間23分大映京都/白黒スタンダード

併映:「お父さんはお人好し」(斎藤寅次郎/花菱アチャコ・浪速千栄子

製作 酒井箴
企画 高桑義生
監督 加戸敏
原作 陣出達朗 「小説の泉」連載“道化獅子”より
脚本 賀集院太郎
撮影 竹村康和
美術 太田誠一
照明 岡本健一
録音 大角正夫
音楽 高橋半
スチール 藤岡輝夫
助監督 渡辺実
出演 水原真知子(お小夜)、阿井美千子(お蝶)、峰幸子(信乃)、清川虹子(蘭々斎天花)、益田喜頓(市助)、杉山昌三九(江口源十郎)、香川良介(和田外記)、荒木忍(折井玄庵)、大邦一公(広瀬主膳)、坂本武(加島文太夫)
惹句 『颯爽の美剣士と瓜ふたつの顔を持つ曲芸一座の人気者が、波乱万丈の御家騒動に捲き込まれて、奇想天外の大あばれ!』『若様と曲芸師が瓜二ツ!恋人が取りちがえる、悪臣が欺される、混乱する御家騒動の中に、颯爽雷蔵一人二役の大あばれ!』『人気者、雷蔵が二役に扮して痛快なる殺陣』『若様がニセモノか、曲芸師がホンモノか、ホンによく似た瓜二ツ!美しい恋人までがとり間違えて恋を囁きにやって来た!爆笑と痛快の風流お家騒動記!』『ヒョンなことから入れ違いになった!悪人までが混戦して、陰謀渦巻く二本松城へ、白刃、手裏剣追いつつ追われつのお色気道中!』

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★作品解説★

 製作酒井箴、企画高桑義生、原作は人気作家陣出達朗で、「小説の泉」に、“道化獅子”の題名で発表好評を博したもの、これを、賀集院太郎が脚色、加戸敏が監督した。

 配役は、若手人気スタア市川雷蔵で、これが、若殿様と曲芸師の二役に扮して痛快な活躍をする。これに、水原真知子(松竹)、阿井美千子、峰幸子、清川虹子が、それぞれ妍を競い、併せて、益田キートン、杉山昌三九、香川良介、荒木忍、大邦一公、坂本武(松竹)の異色メンバーが競演の火花を散す。

山根貞夫のお楽しみゼミナール

 『綱渡り見世物侍』は1955年の大映作品で、市川雷蔵の単独主演作としては五本目にあたる。

 市川雷蔵は長谷川一夫の脇をつとめた前年のデビュー第二作『銭形平次捕物控・幽霊大名』につづいて、二役を演じる。それも大名の若様と手裏剣投げの曲芸師という、身分・境遇はもとより性格もまるで異なる二役なのが興味深い。しかも二人が入れ替わるという点がミソで、殿様姿の雷蔵がべらんめえ口調でクサヤをむしゃむしゃうまそうに食べ、いっぽう、粋な町人姿の雷蔵が侍言葉でクサヤの匂いに辟易するさまを交互に描くくだりは、しゃれたユーモアの味にあふれている。そしてむろん、クライマックスの大チャンバラ場面では、二人の雷蔵が同一画面でちゃんと顔を合わせる。

 ・・・・若様と曲芸師が瓜二ツ!恋人が取りちがえる、悪臣が欺される、混乱する御家騒動の中に、颯爽雷蔵一人二役の大あばれ!

 勢いのいい惹句である。明らかにここには、当時の市川雷蔵に対する大映の期待の大きさが現われているといえよう。だが、それにしては、陣出達朗の原作小説のタイトル「道化獅子」がなぜ『綱渡り見世物侍』になったのだろうと思う。なにやらキワモノめくではないか。いや、そのほうが雷蔵の魅力を盛り立てるというのか。

 市川雷蔵は当時、ファン・グループの雑誌に寄せた文章でこの映画の二役について触れ、曲芸師のほうはユーモラスな性格なので少々喜劇的な演技を必要とし、まったく自分にとって“破天荒”な役であると述べている。そして、これで“新しい芸風”を開拓しようと努力している、と。熱い意気込み、というより、誠実な心意気を感じさせる発言である。雷蔵らしいというべきか。と、なおさら題名のキワモノ調が気にかかる。それはさておき、市川雷蔵はその心意気のとおり、巨匠溝口建二による次作『新・平家物語』で俳優として一大飛躍を遂げることになる。(キネマ倶楽部・日本映画傑作全集ビデオ解説より)

☆殿様ともなれば痣まで小判型

 大映痛快篇『綱渡り見世物侍』の主人公、曲芸師力太郎と若殿様鉄之丞は全く瓜二つで、只一つ違っているのは殿様の左腕にある痣だけ。そこで此の二つの役に扮する市川雷蔵、若殿様になる時はあざを描くのだが、一々面倒なのでクローズアップの時以外は、セロファンに画いて貼りつけるという方法を案出する。

 力太郎と間違えられてオランダ座に加入している鉄之丞を許婚力太郎と思い込んだお小夜(水原真知子)が愛の誓いを迫る場面で、止むなく鉄之丞が左腕を見せて身の素性を明かそうとすると、セロファンが汗ではがれて行方不明となる。そこで加戸監督が雷蔵の腕に痣を画いてやるのを、のぞきこんだ水原、「やっぱり十万石の殿様ともなると、お金持ちだから痣まで小判型ですね」(公開当時のパンフレットより)

 

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▼ 物 語 ▼

 江戸は浅草奥山に小屋掛けする阿蘭陀座は、南蛮渡来と称する異国風の奇術軽業で客を呼んでいる。中でも力太郎とお小夜のコンビニなる手裏剣投げの妙技は、断然江戸中の人気を沸かしている。力太郎は江戸っ子の典型で、喧嘩早く、おとこ気のある、如何にも芸人らしいいなせな男。言い寄る女達には目もくれず、お小夜と晴れて祝言を挙げる日を楽しみに、せっせと稼いでいた。お小夜の病父に金を貸した越後屋は折あらばとお小夜の身体をねらっているので、力太郎としては、一日も早く借金のかたをつけたかった。

 今日も力太郎は、座頭から貰った給金をそっくり越後屋へ届けようと小屋を出た途中−浅草寺の雑踏で、たちの悪いゴロツキ浪人、谷甚左衛門の一党に取り巻かれている美人スリのお蝶を助けようと争いの最中、幸いお小夜が飛び出して来たので、彼女の機転で、その場を逃げ出したはものの、浪人共は執拗に三人の姿を探し求める。それでもどうやら無事に越後屋へ金を届けての帰る道、力太郎は一人の老武士に呼び止められた。

 「若殿」と呼ばれて一瞬呆然とした力太郎は「何卒、御帰館賜わりたい」と聞くに及んで、はっきり人違いである事をさとったが、武士は必死にすがりつく。その手を夢中で払って力太郎、一目散に逃げて来た。

 此の老武士は奥州二本松藩の江戸家老加島文太夫といい、かねて失踪中の嫡子鉄之丞の行方をさがし求めていた。藩主丹羽左京太夫には他に妾腹の菊丸があり、之を世嗣として擁立する陰謀派は主君の病篤きに乗じて、一挙に野望を遂げんと、これまた鉄之丞を追っている。力太郎と争った浪人達は此の一味に雇われている連中である。

 翌日、浪人共は阿蘭陀座の似顔絵看板を見て楽屋に押し入ったが、当のお小夜と力太郎は傍らにあった奇術の大箱に身をかくし、そのまま床下へ抜けてしまった。執拗にさがし廻る浪人共の目はくらましたものの、家臣をすぐって伝法院裏に待構えた文太夫の網に力太郎、かかってしまった。手取り足取り駕籠の中に押し込まれ、丹羽家上屋敷へ連れこまれたが、飽くまで人違いだと言い張る力太郎を文太夫は始めて不審に思った。彼が力太郎の左腕をあらためて見ると、鉄之丞の目じるしとなる小判型の痣が発見されない。

 一旦、絶望に打ち挫かれた文太夫、やがて窮余の一策を案出した。力太郎を身代わりに仕立てて二本松城へ送ろうというのだ。もとより力太郎首をタテに振らないが、礼金が大枚百両と聞いてはお小夜父娘のため決心せざるを得ない。

 さて、本物の若殿鉄之丞は一体何処にいるのか?彼もやはり江戸の一角に隠れ住み、日頃、柳生道場に剣を学んで練達の誉れを得ると共に、他日父の病を癒そうと、薬学を学んでいた。

 一夜、東橋上で陰謀派の江口源十郎に襲撃されたのも薬学の大家折井玄庵と薬種問屋を訪れての帰途であった。鉄之丞悠然として玄庵の駕籠を去らせ、手練の早業、ニ-三人斬り捨てると轟然!源十郎の短銃が火を吐いた。白煙の裡に欄干越に大川い落ちた鉄之丞が、やがて岸へ泳ぎつき闇にまぎれて忍びこんだ処は阿蘭陀座の楽屋であった。ずぶぬれの裸一貫、つづらの蔭でふるえる鉄之丞をお小夜、てっきり力太郎と思いこんでしまったのも無理はない。川に落ちたと聞いて甲斐々しく、つづらから着物を出して着せかける。

 「断りもなく闖入した拙者にこの御親切、有難く御礼申すぞ」というとんちんかんな武家言葉も、川の中で頭を打って一時気が変になったのだろうと、お小夜一向に意に介せず、翌朝早々ハリキッて手裏剣の稽古に引っ張り出す始末である。奇しくも阿蘭陀座次の巡業先は二本松ときまった。

 茲に至って力太郎と鉄之丞、今は全く立場が入れ替わってしまった!

 若様になりすました曲芸師と、曲芸師に化けた大名の若様がいよいよ風雲の二本松城へ乗りこんで、如何に奇想天外の活躍を演じるのであろうか?(公開当時のパンフレットより)

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