人肌孔雀

1958年8月3日(日)公開/1時間39分大映京都/カラーシネマスコープ

併映:「銭形平次捕物控・鬼火燈篭」(加戸敏/長谷川一夫・香川京子)

監督 森一生
製作 酒井箴
企画 浅井昭三郎
脚本 松村正温
撮影 相坂操一
美術 内藤昭
照明 伊藤貞一
録音 大谷巌
音楽 斎藤一郎
助監督 井上昭
スチール 浅田延之助
出演 山本富士子(おしの・京極若狭之介・染香)、梅若正二(流れ星の宗吉)、近藤美恵子(お銀)、三田登喜子(おみよ)、島田竜三(関白鷹司卿)、堺俊二(下ッ引三六)、河津清三郎(土岐安房守)、月田昌也(駕かき仙太)、伊沢一郎(山上左内)、小川虎之助(跡部源左衛門)、沢村宗之助(越前屋重兵衛)、石黒達也(諸岡弥十郎)
惹句 『芸者姿で秘密をさぐり若衆姿で斬りまくり娘姿で恋をする山本富士子の七変化』『水もしたたる男装の山本富士子新蔭流の達人雷蔵闇に翻ぶ怪盗梅若時代劇の面白さを十二分に盛り込んだ豪華超大作』『敵を狙う若衆姿の山本を助けて雷蔵の快刀はさや走る』

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[解 説]

 時代劇でなければ現わし得ない夢、『人肌孔雀』はそんな美しい楽しい夢を盛りたくさんにつめ合せた娯楽映画のデラックス版です。

 悪人達のたくらみで、罪なくして取り潰しになった江戸の豪商の忘れ形見、美貌の乙女が、それから七年後の江戸に現れ、あるいは水も滴る若衆姿に、あるいは可憐な薬売りに、あるいは濃艶な深川の芸者姿と神出鬼没の七変化の活躍をし、更にこれを助ける旗本次男坊の快剣士あり、江戸の闇に飛ぶ怪盗、恋に生きる妖艶の女賊らが、色彩ワイドの大画面一杯に絢爛たるロマンスを繰り展げる痛快で、しかも美しい物語となっています。

 この映画での一番の興味は、何と云っても人気絶頂の山本富士子が、復讐の悲願を抱く美貌の乙女に扮し、映画界入り以来初めての男装をするということで、そのこぼれる様な美剣士の風貌は最高の魅力を発揮します。

 これにたいして、市川雷蔵が得意の旗本次男坊的な奔放の青年剣士を演じ、画面せましと快剣をふるっての縦横の活躍、更に新芸域を拡げつつある梅若正二が、今度は江戸の侠盗になっての多芸ぶりを見せ、近藤美恵子がまた妖艶の女賊に扮するなど、三田登喜子、島田竜三、月田昌也、堺俊二、伊沢一郎、小川虎之助、沢村宗之助、石黒達也、河津清三郎らの一流の芸達者をズラリ揃えての盛観ぶりです。

 なお、この『人肌孔雀』には、山本富士子がビクターから主題歌を吹きこみ、この映画の魅力を更に盛りあげております。

 製作酒井箴、企画浅井昭三郎、脚本松村正温、監督森一生、撮影相坂操一。

(大映No26より)

 和服姿ではちょっと右に出るものが見当たらないとわれる山本富士子が、初の若衆姿で、ファンの期待に答えようというもの。話は、悪人たちの奸計で、罪なくして取り潰しになった江戸の豪商の忘れがたみ、美貌の乙女が、七年後、江戸に現われ仇を討つというもので、ある時は若衆姿に、ある時は薬売に、またある時は深川の芸者に扮するヒロインを中心に、旗本次男坊の青年剣士、江戸の闇に生きる盗賊と、多彩な時代劇絵巻がくりひろげられる。

 出演者は、復讐の悲願を抱く宿命の乙女に山本富士子をはじめ、青年剣士奈須新八郎に市川雷蔵、侠盗流れ星の宗吉に梅若正二、女賊お銀に近藤美恵子のほか、三田登喜子、島田竜三、月田昌也、堺駿二、伊沢一郎、小川虎之助、石黒達也、河津清三郎など。脚本は松村正温、監督は森一生。(「キネマ旬報」58年8月上旬号より)

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空に月、船に美男美女(雷蔵 山本)

見るからに涼しげな濡れ場も

セットは赤道直下さながらシャクネツの恋

 大映でいま撮影中の大スコープ・総天然色『人肌孔雀』(監督 森一生、山本富士子、市川雷蔵、梅若正二、近藤美恵子、島田竜三、三田登喜子出演)は、山本富士子の初めての男装を含む一人三役で早くも人気をあおっているが、前髪姿で立廻りをやり、芸者姿で恋をするお富士さんは目のまわるような忙しさ。

 このほどセットで行われた大川のシーンなども、その好例で、昼は若衆で颯爽たるところを見せ、夜は濃艶な芸者になって、市川雷蔵の青年剣士と恋を囁いた。

 このセットは、大映京都最大の第七ステージ一杯をプールにして満々と水をたたえ、これにところどころ葦を植え、これに一艘の屋形船を浮べた見るからに涼しげな、江戸は大川の夜景で、最初のシーンは町筋で芸者染香(山本富士子)を追って来た悪人方の剣客諸岡弥十郎(石黒達也)ら一団の武士が、このあたりで彼女の姿を見失って、川端にもやっている屋形船を怪しいと睨む。武士の一人が案内もなくサッと障子を開けると、途端に武士の姿は一転して水中に落下し、悠然と現われ来たのは水も滴る若衆姿の京極若狭之介(山本富士子)という、劇中の人物と同時に観客をもサッと云わせる鮮やかな早変りの一コマである。

 続いて、別のシーン、芸者染香になって現われるところは、染香すなわち、おしのの父江戸の豪商鍵屋に恩を受け、今は怪盗になりながらも、その恩をかえそうとしている流れ星の宗吉(梅若正二)が、敵方の死命を握る密書を手に入れながら、染香に渡す機会がないのを取り持った旗本の次男坊の奈須新八郎(市川雷蔵)が、わざわざ屋形船に染香を呼んで、その密書を渡し、これまでわだかまりを持っていたこの三人がはじめて和解するところ。

[略 筋]

 “鍵屋七回忌供養、流れ星”と記されてあった。箱根に泊まった勘定奉行土岐安房守、豪商越前屋重兵衛、両国屋嘉七らの部屋で発見された髑髏の口にはさんであった紙には。同宿には、鷹司関白家の近習京極若狭之介と、旗本浪人奈須新八郎とその供下っ引の三六の三人がいた。が、犯人は判らぬ。

 江戸で、鳥長屋の薬売り・甚兵衛老人が安房守一味の用心棒諸岡弥十郎に斬られた。娘のみよに謎めいたことをつぶやくと死んだ。それを聞くと、旅から帰った新八郎の眼が光った。

 越前屋は若狭之介に取りいり、朝廷御用承りの許可を得た。それを利用し、安房守一味は米買占め・密貿易をはかるつもりだ。若狭之介のあとを尾けていた怪盗流れ星の宗吉にいどんだ新八郎は、彼の残した煙草入れから、彼が七年前没落した鍵屋ゆかりの者とにらんだ。叔父の目付役源左衛門に、彼は鍵屋事件の再調査を願い出た。

 両国屋は越前屋に禁裏御用許可をだし抜かれ、激怒した。安房守一味に“秘密をバラす”と口走った。その席にいた芸者染香は若狭之介によく似た女だった。その夜両国屋は弥十郎に殺された。染香−つまり若狭之介−すなわち鍵屋の遺児おしのが手を下す前に。深川の八卦見に、染香は素性を指摘され、やにわに斬りかかった。のち、大川端の屋形船へこの浪人−新八郎に呼ばれた。彼は宗吉(かっての鍵屋の丁稚)が盗み出した越前屋と安房守の秘密の手紙を彼女に渡した。彼と彼女と宗吉は協力することになった。

 安房守一味は若狭之介・染香・おしののつながりに気づき、あばこうとした。一度は切り抜けたが、鍵屋ゆかりの甚兵衛老人の娘おみよがさらわれ、それを救いに品川へ行き、罠にかかった。安房守一味の白刃にかこまれた。すでに越前屋は弥十郎の手で殺され、仇は残る一人だというのに。そのとき、新八郎が叔父の目付役の名代として現われた。安房守の罪状は明白だった。若狭之介はもとのおしのに戻った。むろん、そのそばには新八郎がいた。(「キネマ旬報」58年8月上旬号より)

人肌孔雀

作詞:佐伯孝夫 作曲:吉田正 編曲:佐野雅美 唄:山本富士子

一、
銀の元結い きりりとしめて 
眉は遠山 唇元牡丹
露のたる様な 前髪若衆
今宵忍はエエ 恋じゃない
ニ、
黄金作りの 細身の太刀の
切るよ鯉口 その手の白さ
誰が知ろうぞ 大振袖に
包みかくしたエエ わが涙
三、
朝の前髪 くずして島田
粋でおぼこな 深川芸者
なればなれるに 人肌牡丹
いつになったらエエ 丸髷に

月見船

作詞:佐伯孝夫 作曲:吉田正 編曲:佐野雅美 唄:山本富士子

一、
あなたのわたしと 初めから
きめてまぶしい 月見船
心一つで どうともさんせ
障子たてよかエエ 簾かえ
ニ、
云いたい聞きたい 山ほどの
つもる想いを 盃に
さしてさされて 何にも云わぬ
先に酔うてエエ 意気地なさ
三、
嫌いになったら その時は
云っておくれな その口で
わたしゃ何でも あのお月さん
好いたあなたがエエ 立つように

 

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