第三の影武者

1963年4月21日(日)公開/1時間44分大映京都/白黒シネマスコープ

併映:「夜の配当」(田中重雄/田宮二郎・藤由紀子)

企画 辻久一
監督 井上梅次
原作 南条範夫
脚本 星川清司
撮影 本多省三
美術 西岡善信
照明 岡本健一
録音 大谷巌
音楽 鏑木創
助監督 西沢鋭治
スチール 三浦康寛
出演 高千穂ひずる(照姫)、万里昌代(小萩)、天知茂(三木定光)、小林勝彦(桑野源太)、島田竜三(広瀬宗城)、金子信雄(篠村左兵太)、角梨枝子(浦路)
惹句 『身代りはもうイヤだ、俺は本物の城主になってやる残酷な運命に抵抗する若者の絶叫

[ 解 説 ]

 戦国の世の常として主君の危急や藩の興亡を守るために設けられていた影武者を主人公にした特異な時代劇で、原作は最近の時代劇映画に一つのブームを巻き起こしている南条範夫の「第三の陰武者」。井上梅次監督が原作発表以来、四カ年にわたって強くその映画化を念願していたものである。

 キャストは野心に燃え、残酷で数奇な運命を辿る若者二宮杏之助と、勇猛を持って近隣に鳴り響く城主池本安高との二役に市川雷蔵が扮し、メーキャップにいろいろ工夫を傾けるなど異常なまでのファイトを燃やしている。また、安高と政略結婚を結ぶ飛騨一の美女照姫に高千穂ひづる、安高の側室小萩に万里昌代、このほか第一の影武者に小林勝彦が扮し、さらにこの影武者をあやつる池本家の軍監と称する篠村左兵太に金子信雄、老女浦路に角梨枝子といった豪華キャストが組まれている。脚色は星川清司。( キネマ旬報より )

   

 影の三、武士になる事にあこがれた一青年が
武士になって与えられた別の名前。
 姿、形、声、動作、すべてが似ている
いや似るようにしこまれる。 しかし・・・

ロケスナップ

  

 文化が発達するに従って、時代劇のロケ地がなくなるそうです。
この写真でもキャメラの向こうに、コンクリートの橋がみえたり舗装された道路・・・

はては電柱まで見えるしだいです。

 昨日の百姓は今日の大名といった戦国動乱期。敵の欺くため、主君と全く同じ武装をし、いつも影のごとく寄り添っていた影武者。

 しかし影武者となった一人の若者は、人間性を無視されたその残酷な運命に堪えかね、ついに主君を殺しこれに代ろうとするが・・・

(よ志哉34号より)

[ 略 筋 ]

 下克上の戦国時代、飛騨の貧乏郷士の倅杏之助もまた一国一城の主を夢みる若者の一人だった。ある日やって来た池本家の軍監と称する篠村左兵太によって、杏之助は三谷城城主池本安高の三番目の影武者として召し抱えられた。三カ月余影武者としての厳しい訓練が重ねられ、とりわけ安高に酷似している杏之助に対するそれは過酷なもので、ついには安高の近習頭も見極めがつかぬほどまでになった。

 永禄九年、杏之助は安高と揃いの武装で初めて合戦に出た。闘いの最中流れ矢が安高の左眼に突きささると、篠村は素早く杏之助に眼帯をさせて代わらせた。倣然と戦野を駈ける杏之助を見て奮いたった全軍は敵の城中へ雪崩れ込んだ。勝利に酔い痴れる夜、篠村は三人の影武者に左眼をつぶせと命じた。怖れをなして逃れた影の二番は連れ戻され斬殺された。二人は手術を受け左眼を醜くつぶされた。

 安高は桜洞城城主三木自綱の息女照姫との婚儀をすすめていた。姫は政略の具になるのを嫌ったが、謀将との誉れ高い三木定光は小国三木家の安泰を計るためにはと自分の姫を慕う私情も抑え、輿入れするように進言した。婚儀の日取りも決まった夜、同盟を結んでいた高堂城の広瀬宗城が夜討ちをかけて来た。不意を討たれて城は陥ち、影の一番も安高の身代わりに戦死した。杏之助は篠村の命で右腕を失った安高を救けて桜洞城へと急いだ。途中、このまま安高を救ければ右腕を失わねばならぬことに気付いた杏之助は、安高を殺してしまい、報告を受けた篠村も今は仕方なく杏之助を安高に仕立て上げることにした。

 自綱は彼らを丁重に迎えたが、定光の提案で婚儀は三田谷城奪回まで延期された。広瀬とはいずれ一戦を交えねばならぬ、それには安高を利用しようというのが彼の考えであった。奪回の機は熟し、杏之助は左平太と共に先陣に立った。苦戦を強いられたが勝敗の帰趨が見えたとき杏之助は混乱に乗じて篠村を刺し殺した。城も陥ちた。飛騨の安高の名は益々高く杏之助は得意の絶頂にあった。ところが、照姫との婚儀が開かれ、さて床入りというとき、定光が来て篠村が虫の息ながら杏之助の秘密の総てを喋ったというのだ。杏之助は一切が終わったことを知った。

 それから二十年、三田谷城は秀吉の軍勢に攻められて落城、唯一人座敷牢に生き残った老人も衰弱甚だしくその日のうちに死んだ。それが影に生き、影に死んだ杏之助の最後であった。( キネマ旬報より )

                                        第三の影武者                外村 完二

 最近ブームを形成している残酷趣味の一篇で、南条範夫の小説を、脚色・星川清司、演出・井上梅次が映画化したもの。

 戦国時代のマキャベリズムの世界を背景に、飛騨の城主の影武者となった貧しい若い郷士の悲劇で、主君が左眼を失ったとき、自分の左眼をえぐりとられた彼が敗軍の路上、右腕を切った主君を救えば、自分も同じ犠牲を払わねばならぬ恐怖と怒りから、城主をしめ殺し、影が本ものになったが、主の妻の愛人に秘密を握られ発狂、終生影の男として牢に入れられる。

 原作は読んでいないが、主君と運命を共にしなければならぬという異常なシチュエーションにおかれた男を、残酷物語の主人公に選んだ着想は悪くはない。しかし映画から受取った印象では、あまりうまく作られているという感じが強く、瓜二つの男の存在などという設定にも、いささか古めかしさがある。

 しかし、この根本的な甘さに眼をふさげば娯楽作品としてまとまった、ソツのなさで股旅監督井上梅次の職人的な達者さを裏書するに十分。雷蔵の城主と影武者の一人二役も好演で、ことに左眼をつぶされてから右目ひとつに、感情の起伏を表現しているのは、演技の進歩といえよう。 

 ただ、これはこの映画だけではないが、残酷イコール血という浅い解釈で、眼をつぶしたり、腕を切ったりするシーンのどぎつく描くのは、一考を求めたい。脚色者・星川が前号で推賞していた溝口健二の残忍の美しさなどは、ひとかけらもない。

 反対に、生身俳優が演じていることを知っている観客には、腕の切口を見せると、作りものの滑稽感が出る。この点は、どんなに苦心しても、記録映画の本物には及ばない。 この映画のニセ者のたどる運命の悲劇は、そのままこのニセ残酷描写に通じ、所詮ギニョール的な誇張は、結局座敷牢ならぬ袋小路に踏みこんでしまうのではないか。

興行価値:残酷もの時代劇で話の面白さが利き、80パーセント。雷蔵・高千穂・万里・天知と役者揃いの割りに派手さがないのはPR不足だ。(キネマ旬報より)

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