1966年9月17日(土)公開/1時間21分大映京都/白黒シネマスコープ

併映:「続・酔いどれ博士」(田中徳三勝新太郎・姿三千子)

企画 関幸輔
監修 日下部一郎
監督 森一生
脚本 長谷川公之
撮影 今井ひろし
美術 太田誠一
照明 伊藤貞一
録音 林土太郎
音楽 斎藤一郎
助監督 大洲斉
スチール 西地正満
出演 村松英子(梅香)、加東大介(草薙中佐)、佐藤慶(西田大尉)、中村隆(杉本明)、中野誠也(佐々木)、伊達三郎(周王洋)、戸浦六宏(山岡中佐)、越川一(元川一郎)、木村玄(堺)、森矢雄二(久保田)、尾上栄五郎(守衛)、原聖四郎(医師)、石原須磨男(番台)、近江輝子(焼鳥屋のおかみ)、香山恵子(佐々木の妻)、毛利郁子(年増芸者)、H・ジョンソン(ジョセフ神父)
惹句 『日本の機密を狙う国際スパイ団迎え撃つ陸軍中野学校一期生の精鋭!スパイのテクニックのすべてをつくして闘う壮絶の諜報戦』『連合国スパイ団をふるえあがらせた陸軍中野学校一期生の諜報作戦はじめてあばかれた秘密戦士の記録

 

 

■ 作品解説 ■

 前作は戦時中に秘められた日本スパイ学校の全貌を初めて描いて、衝撃の異色作として『陸軍中野学校』は全国に大ヒットしました。この映画では連合国スパイ団をふるえあがらせた中野学校一期生の諜報作戦をはじめてあばかれた秘密戦士の記録です。

 内容はスパイ学校を優秀な成績で卒業した椎名次郎は、北支軍司令部付を命ぜられ、北支へ赴任の車中で、至急電報を受け取った。それは雲一号指令である。指定された場所神戸、ここを舞台に、日本へ潜入したスパイ機関と、命を賭けて対決することになるが、敵スパイも優秀で雲指令一号はいかにして敵を封ずるか・・・・。

 出演者は雷蔵の椎名次郎を初め、加東大介は中野学校の創始者で草薙中佐、村松英子は売れっ子芸者の梅香で花を添え、それぞれベテランのキャストが組まれている。監督はベテラン森一生、脚本長谷川公之、撮影は今井ひろしが担当する。

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■ 物  語 ■

 昭和十四年秋、全世界に世界大戦の危機感が日増しに強まっていた。陸軍中野学校第一回卒業生椎名次郎は、北支軍司令部付を命ぜられ、北京へ向けて旅立ったが、途中下関で、参謀本部からの至急電報を受け取った。それは「雲一号指令」となっており、指定された場所は神戸であった。当地には草薙中佐が滞在中だ。

 最近、神戸港から発った大型軍用船が、たびたび時限爆弾で沈められていた。かなり高度の技術を持った敵スパイが神戸に潜伏中と考えられる。事態を重視した軍当局は、神戸憲兵隊に全力をあげての捜査を命ずる一方、草薙中佐の進言に依り、中野学校一期生の中から、最優秀の椎名と杉本を、秘密裡に神戸に派遣し、憲兵隊とは別に独自の捜査にあたらせる事に決定、杉本はすでに二日前から神戸で内偵中だった。

 捜査の第一段階で、浮び上ってきた人物は、港近くの軍用倉庫の夜警であった。その夜警を洗うと、朝下宿に帰って昼までねむり、正午頃必ずある風呂場へ行く事がわかり、椎名は様子を見るためにでかけた。しばらくすると、男女別に仕切られた風呂場の共通のオカ場を通して、女湯の方から手が伸び、夜警と石鹸箱をすり変える現場を目撃した椎名は女を尾行した。意外にも彼女は神戸花街の売れっ子芸者梅香であること梅香は神戸憲兵隊の隊長山岡中佐の陰の愛人である事実が判明する。

 この線を手掛りに椎名次郎の、大きな見えざる敵諜報組織への挑戦が開始される。梅香と夜警は中国延安で、数多くの中から選び出された優秀なる中国人で、全く日本人になりきる為の訓練を受け、驚くべき巧妙さで日本の重要基地神戸へ送りこまれた抗日愛国者であり、それと連絡を持つレストラン経営の親日家を装う英国人、また椎名の大学仲間で、今は「香港プレス」の神戸駐在員として愛国者を偽装して日本の上流社会に接近、日本の重要秘密を流していた反戦主義者の佐々木などが次々と浮び上ってきた。この四人の上に立って直接行動を指示し、また集めた重要機密を無線で外国に送信していたのは意外にも神戸のXX教会の外人神父であった・・・・。

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              陸軍中野学校 雲一号指令           林 玉樹

 日本で初めて作られた組織的スパイ養成機関・中野学校の第一期生である椎名次郎が活躍する第二作。

 こんどは昭和十四年の話で、高性能爆弾を積んで神戸から大陸に向かう輸送船が連続爆破される事件を追う。ママ子みたいな中野学校がとかく軍部内でも白眼視され、実は女にからんで機密を洩らしていたのが軍部内でのライバル(前作では参謀本部の防諜将校、こんどは憲兵大尉)だというのは、第一作とおなじ趣向である。

 正直いって、あまり取り柄はない。第一作ではまだしも、加東大介演ずる参謀中佐が、独力で中野学校を創設する生みの苦しみ、その訓練の苛烈さ、それから正しいかどうかはべつとして、中佐と大学出身の生徒たちに共通する理想みたいなものが主張されていた。でももそれは終わってしまったのだから、つぎは実技といくほかない。ところがそれがうまくなかった。

 まず推理性。椎名の相棒、杉本が、いち早く倉庫の夜警をあやしいと目星をつけるが、その根拠はまったく不明である。この夜警を尾行する椎名が、梅香という芸者をマークすることになるが、この梅香がほんものの梅香でなく、梅香を消して成り替わった中国人であったということを突きとめるプロセスも、すこぶる杜撰。

 つぎに小道具のこと。昭和十四年と限定してしまったのだから、当節のスパイ・アクションみたいに新鋭武器(?)を持ち出せない苦衷はわかるが、ナタマネぎせるの時限爆弾とか、憲兵大尉と梅香の部屋をのぞき見るパイプ型潜望鏡など、市川雷蔵がしかめつらしい顔でやるだけに、どうもこっけい感が先に立つ。

 さらにスリル。暗号でもなんでもなくて時間まで明示した造船所爆破計画の文書を、どこのだれがどんな目的でスパイの外人神父のところに届けたのかはわからないが、爆発寸前、棒みたいなものを椎名が発見して、スポーツの槍投げよろしく海に投げると、ポカンと爆発。あれで造船所に致命的被害を与えられる時限爆弾なのであろうか。タイトル前の輸送船沈没のミニチュア・シーンとおなじく、あまりに貧しい。

 いやしくも憲兵大尉たるものが、いかに自分の過失の動かぬ証拠をつきつけられたにせよ、そこからいくらでもスパイ網をたぐれる芸者・梅香を料亭でいきなり射殺してしまい、その場で自殺することも、ずいぶん不思議だが、まあそのへんはいいことにしよう。

 時代的、予算的(?)に、いろいろ制約はあると思う。しかしせめて、なにか心棒をつくれなかっただろうか。椎名の大学での同級生だというインテリが外人のスパイ網にはいり、秘密を守って自殺していく論理、あるいは、日本帝国主義と戦う愛国者と開き直る中国人・梅香の心意気。そのへんを無造作に、活劇のアクセサリーとしてやりすごすことは、いかに娯楽アクションとしてもひっかかる現在なのである。まして、娯楽アクションとしてさえ物足りないことにおいておや。

興行価値:日本で作るスパイ映画としてはすばらしい企画だが、シリーズにするなら、一作一作ていねいに作ってほしいもの。興行価値70%くらいか。(キネマ旬報より)

詳細は、シリーズ映画「陸軍中野学校シリーズ」参照。

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