新鞍馬天狗

1965年9月18日(土)公開/1時間18分大映京都/カラーシネマスコープ

併映:「座頭市逆手斬り」(森一生/勝新太郎・滝瑛子)

監督 安田公義
原作 大仏次郎
脚本 相良準三・浅井昭三郎
撮影 森田富十郎
美術 加藤茂
照明 古谷賢次
録音 長岡栄
音楽 斎藤一郎
助監督 宮島八蔵
スチール 西地正満
出演 中村玉緒(おとよ)、藤巻潤(桂小五郎)、中村竹弥(近藤勇)、中村敦夫(村尾真弓)、藤原礼子(幾松)、五味竜太郎(土方歳三)、香川良介(松平伯守)、二宮秀樹(杉作)、本郷秀雄(吉兵衛)、遠藤辰雄(黒門町の長次)、浜田雄史(沖田総司)、木村玄(鳴海修平)、平泉征七郎(舟曳休之助)
惹句 『人か、天狗か、黒い影誰にも見せぬその正体誰にも負けぬ凄い剣』『暗殺、拷問、浪人狩り血を血で洗う真っ只中に、天狗の剣が狙ったものは?』

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 作 品 解 説 ■

 大仏次郎原作の“鞍馬天狗”と云えば、時代劇の面白さを縦横無尽に織り込んだ傑作小説として一生を風靡した人気小説ですが、この市川雷蔵主演で描く「鞍馬天狗」(総天然色)は、神出鬼没の機動力に富んだ主人公の痛快な活躍を粧いも新らたに、様々な現代映画のテクニックを凝らして、ダイナミックにスピーディに大型画面一杯に描きつくそうという娯楽に徹した一作です。

☆ドラマは、風雲、渦巻く幕末の京都を舞台に、倒幕に奔走する勤皇党やそれを追って狂奔する新選組の群狼との火の出るような激突を描きながら、黒覆面に正体を包み、右手に短筒、左手に白刃をひらめかし、白馬にまたがって忽然と現れては忽然と消える快傑、鞍馬天狗の神出鬼没の活躍を描いていくものですが、江戸幕府から京都に送り込まれた秘密諜報機関と天狗との虚々実々の斗い。御存知、角兵衛獅子の杉作少年と天狗の微笑ましい交情などが織り込まれ、興趣を添えます。

☆キャストは、市川雷蔵が、彼自身の持ち味を生かした全く新しい“鞍馬天狗”を作ろうと意欲を燃やして、この新シリーズに取組む他、女優陣に、中村玉緒、藤原礼子、小村雪子、桂小五郎に藤巻潤、近藤勇に中村竹弥、杉作に二宮秀樹の他、佐々木孝丸、本郷秀雄、中村敦夫、五味竜太郎、遠藤辰雄、香川良介、伊達三郎の面々が顔をそろえています。

☆演出には、ベテラン、安田公義監督がきめの細かいメガホンをふるう他脚本、相良準三・浅井昭三郎、撮影、森田富士郎、録音、長岡栄、美術、加藤茂、照明、古谷賢次らが、スクラムを組んでいます。

■ 物 語 ■

 動乱の幕末、京洛の巷では、連日倒幕に命を賭ける各藩の志士達と新選組との血で血を洗う死斗が展開されていた。その斗争の真っ只中に忽然と現れ、志士達を助けて活躍する鞍馬天狗と名乗る覆面の武士がいた。新選組は、この怪人物の正体をつきとめようと躍起になったが、とある路地の荒物屋に二階借りしている倉田典膳という浪人がその人だった。典膳は、習字を教えて生計を立てている近所の評判も良い物静かな浪人だったが、その実、荒物屋の主人、吉兵衛は、“黒姫”と異名を取る盗賊で“鞍馬天狗”の手下だった。

 “天狗”とは知らず、典膳がよく訪れる小料理屋“ふか川”の女主人、おとよは、典膳に思慕の情を寄せたが、おとよには新選組隊士の弟、舟曳休之助がいた。一夜、壬生の屯所に捕われた長州藩士を救わんと忍び込んだ天狗は、見張りの休之助を斬った。典膳を天狗とは知らぬおとよは、一途に弟の仇、鞍馬天狗を恨んだ。

 江戸から老中の指令を受けて京都に潜入した元大目付、宗像左近は、秘密諜報組織を作って活動を開始した。その為、倒幕派の浪人は、ひんぴんと襲撃を受けた。桂小五郎も愛人の祇園の芸者幾松の家にいる時や同志との会合の場を襲われたが、その都度、鞍馬天狗の機敏な活躍で救われた。天狗はふとしたことから困っている仲間の角兵獅子に金をやったことから親方に追い出されて泣いている杉作少年を助けて家に引き取った。

 ある夜、新選組の急襲を知らせんと桂達の会合の場所に急いだ天狗は、お高租頭巾の女から短筒で撃たれて手傷を負ったが、取り押さえた女は、おとよだった。おとよも天狗が典膳と知ってガク然とした。おとよは、弟を斬られてから、宗像左近の組織の一員として働いていたものだった。天狗は何も云わず、おとよを放してやった。天狗ならぬ典膳を思い切れぬおとよは、幾松を訪ねたが、桂の為に、いつでも身代わりに立つ覚悟で、お座敷着の下に白無垢を着込んでいる幾松の心意気に女心を打たれた。

 左近の諜報機関が重大な情報を大阪城の幕府方に知らせる事をかぎつけた天狗は、白馬にまたがり、追いすがって密使を斬った。天狗は密使になりすまし大阪城に向かったが、ひん死の密使は、必死の気力をふりしぼって左近にこの事を知らせた。左近は、京に引き返し伝書鳩に托しこの事を大阪城に告げた。天狗の命を受けて左近を見張っていた吉兵衛は、左近の放った小柄に傷つきながらも杉作に鞍馬天狗の危機を知らせた。杉作は、必死に大阪に急いだ-その頃、大阪城では、天狗の変装した使者が城代、松平伯耆守に会っていた。将軍の上洛を告げる回状と倒幕派浪人の人別帖が、天狗に渡されんとした時、飛来した鳩が、天狗の正体を暴露した。それと悟った天狗は、鉄砲隊の攻撃を受けながらも必死に逃れんとしたが、遂に、城内の一隅に追い込まれてしまった。さすがの天狗も、手も足も出なくなった時、子供の身を利用して、忍び込んできた杉作が、機転をきかして、天狗の愛馬を奪い返した。斬込隊のわずかな隙に天狗は、一角を突破し、杉作と共に、白馬にまたがり、追いすがる幕臣達を短筒で倒しながら、城門を駈けぬけた。

 左近を倒すことが、今や最大の急務と知った天狗は、一夜、果し状をつきつけた。“当方一人なれど、助太刀の人数何名お連れなさるとも異存なし”約束の場所、桂河原には、左近一味の他、近藤勇、土方歳三以下新選組隊士らが続々とつめかけ、天狗を待った・・・。( 公開当時のプレスシートより )

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大佛 次カ(おさらぎ じろう、新字体:大仏 次郎)1897(明治30)年10月9日 - 1973(昭和48)年4月30日

 神奈川県横浜市英町に生まれた。白金小から東京府立一中、1高を経て、東京帝国大学法学部政治学科を卒業。その後、鎌倉高等女学校(現・鎌倉女学院高等学校)教師となった。ついで外務省条約局嘱託となり、この時代にさまざまなペンネームを駆使して小説、翻訳、翻案を書き、関東大震災後に退職して小説家の道に進んだ。

 娯楽雑誌「ポケット」に事実上のデビュー作となる小説「隼の源次」を発表するときに初めて「大佛次郎」のペンネームを使い、以後これが終生彼のペンネームとなった。執筆当時彼が鎌倉市長谷の大仏(旧字体:大佛)の裏手に住んでいたことに由来する。

 生地に近い港の見える丘公園に大佛郎記念館がある。また鎌倉の邸宅は、週末だけ大仏茶廊として一部公開されている。1964年に文化勲章受章。1973年(昭和48年)4月30日に転移性肝臓癌で死去。享年75。

鞍馬天狗誕生 東大政治学科出身(横浜生まれ、明治30〜昭和48)で西欧の文学・演劇青年だった本名野尻清彦が、当時下級視されていた大衆雑誌へ15もの筆名を用いて翻訳や娯楽小説を書き出したのは、生活と蔵書の資金稼ぎのためだという事情があった。鞍馬天狗が現れるのはその多作の中の一つで、一篇限りでオシマイにするつもりだったという。

  「鬼面の老女」(大正13「ポケット」)しかもこのときは青年公卿が主人公で、こののち40年も読者を魅了するヒーローは、特別出演の脇役。[年齢は四十位になると思われる、男盛りの、鼻秀で眉深く眼光炯々たる立派な男振り]で[黒い頭巾に顔をつつん]でいた・・・・ところが俄然この特別出演氏に人気が集中。以後名コンビとなる元盗賊の黒姫の吉兵衛も第四話「刺青」から顔を見せ、やがて鞍馬天狗を優しいオジサンとして頼り全国の少年たちまでファンに魅き込むことになる、可愛そうな角兵獅子の少年杉作クンが加わって、ここに不変のトリオができあがることになったのである。( 別冊太陽83「時代小説のヒーロー100」石井冨士弥より )

 大仏次郎作「鞍馬天狗」シリーズは朝日文庫・徳間文庫等で読める。

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