新鞍馬天狗 五條坂の決闘

1965年11月27日(土)公開/1時間15分大映京都/カラーシネマスコープ

併映:「大怪獣ガメラ」(湯浅憲明/船越英二・姿美千子)

企画 奥田久司
監督 黒田義之
原作 大仏次郎
脚本 八尋不二
撮影 武田千吉郎
美術 西岡善信
照明 加藤博也
録音 奥村雅弘
音楽 高橋半
助監督 鍋井敏宏
スチール 藤岡輝夫
出演 万里昌代(小雪・頭巾の女)、山本学(志賀虎之助)、芦屋雁之助(源七)、芦屋小雁(久八)、五味竜太郎(大前田逸蔵)、清村耕次(黒姫の吉兵衛)、二宮秀樹(杉作)、須賀不二男(駒木根堅物)、伊達三郎(土方歳三)、杉山昌三九(白髪老人)、原聖四郎(小松帯刀)
惹句 『白髪の暗殺鬼へたたきつけた天狗、不敵の挑戦状』『天狗と杉作少年をねらう謎の山岳嶽党妖気迫る白髪鬼の正体は?』『右に拳銃左に快剣闇を蹴散らす天狗の襲撃

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■ 作 品 解 説 

 市川雷蔵主演の新シリーズ第二弾『新鞍馬天狗 五條坂の決闘』は山嶽党と名乗る奇怪な暗殺集団に挑戦する天狗の大活躍で、前作にも増して神出鬼没のスーパーマンぶりを発揮、黒頭巾に黒の着流しで颯爽と白馬を矢のように駈けめぐらせ、姿も音もなく襲いかかる山嶽党の群れを二挺拳銃で射ちまくり剣で斬り、迫りくる危機また危機を突破していく。ここに大映京撮が誇る特撮技術をふんだんに駆使、時代劇のトリック映画の面白さと魅力にあふれる痛快篇を製作、手に汗握るスリリングなアクションの連続の中で、勇敢な杉作少年や機敏な黒姫の吉兵衛などのおなじみの人物が多彩に活躍、ご家族揃って楽しめる娯楽作品として提供する。

 監督には大映特撮映画の特撮部門を担当して優れた手腕をみせていた黒田義之(昭和3年生まれ、『日蓮と蒙古大襲来』『大江山酒天童子』『釈迦』『あしやからの飛行』等を担当)が特異なスタイルとアイディアを持って本格的にデビュー、出演者には民芸の山本学と青俳の清村耕次が大映初出演して充実した演技をみせるほか、唯一人の女優には万里昌代が久しぶりに顔をみせ、また、芦屋雁之助と芦屋小雁がおとぼけ天狗ろからみあうなど、いよいよ軌道にのる“新・鞍馬天狗シリーズ”は新鮮な話題と豊富な顔ぶれで登場する。(大映京都作品案内No.784より)

  

■ 物 語 ■

 頃は幕末。鞍馬天狗召し捕りに躍起となっている京都所司代駒木根監物宛に、“鞍馬天狗の暗殺を引き受ける”という山嶽党からの手紙が届いた。そんな頃、倉田典膳こと鞍馬天狗は賞金つきの自分の人相書きが張ってある居酒屋で、平然と所司代同心・志賀虎之助と世間話を肴に酒を飲んでいた。そんな夜のこと。鞍馬天狗の住家である吉兵衛が営んでいる店に、様子を探る風情のお高祖頭巾の女が傘を買いに来た。怪しげな様子に“女の後を付けるように”と吉兵衛に頼んで、天狗は薩摩屋敷へと出かけていった・・・。

 その帰路のこと。天狗は激しい雷雨の中を杖にすがった怪しげな白髪の老人に出会った。不審に思いながら帰宅すると・・・、吉兵衛は手足を縛られ、杉作は何者かに連れ去られていた。その上、火鉢には火薬が仕掛けられ、庭に投げ捨てた途端に爆発する。そして、“杉作を受け取りに糺の森に来い”という山獄党からの挑戦状が投げ込まれた。

 早速、糺の森に出向いた天狗だが、白髪の老人が指揮する山獄党に一斉射撃を浴びせかけられる。そこで、天狗は杉作を救出したものの、しかし・・・。拾った見取り図を天狗に渡そうとした杉作は銃弾に当って負傷し、その時、折りよく通りかかった浪人・大前田逸蔵に医師の家にかつぎ込まれるが、実は、彼もまた報奨金欲しさに鞍馬天狗を狙っているひとりだった。

 数日後、傷の治った杉作はお高祖頭巾の女を尾行して、洞窟に閉じ込められ、天狗に助け出されるが、またも、吉兵衛と共に捕えられ、火薬庫に押し込められてしまう。危うし杉作!その時、白髪の老人の正体を知った鞍馬天狗は白馬に跨り、杉作たちが幽閉されている山塞を目指し疾走する・・・。

■ み ど こ ろ ■

 (1)スーパーマン雷蔵天狗が短銃で撃ちまくる颯爽たる姿が堪能できます。

 (2)さわやかで端正な語りは雷蔵ならではの口跡です。

 (3)新選組隊士が待ち受ける朝靄の中、雷蔵の謡曲「鞍馬」が流れます。

             

                        新 鞍馬天狗 五條坂の決闘             小菅春生

 二つの意外性でおもしろみを工夫している作品である。一つは、新選組以上の手ごわい相手として鞍馬天狗を苦しめる暗殺団の首領の正体、もう一つは、姿を現わすごとに杉作や吉兵衛に被害を与えるナゾの女の正体である。

 天狗はある日、居酒屋で、コネがなければ一生ウダツが上らぬとボヤく、若い気のよさそうな所司代の下っ端役人と盃をくみかわす。天狗と二度三度と対決する暗殺団の首領は、醜怪な顔つきの老人でくさり鎌の達人。これがラストで、この気のいい下っ端役人だったと判明する仕組みだ、この意外性はなかなかうまくきいている。

 だが、天狗が彼の正体を知っていたという描き方には大分、飛躍がある。天狗(及び作者)だけがひとりのみこみに知っていて、観客は置いてけぼりを食わされているからだ。天狗が首領の正体を知ったヒントを描いてしまうと、かんじんの意外性がなくなってしまうからだろうが、そこをうまくはぐらかしてナゾを保つのが作者(八尋不二)の腕というものだろう。それでなければいっそ、彼の正体は天狗にも意外だったという描き方のほうがすっきりする。

 これはしかし、まだ着想のおもしろさが勝っているのでいいが、ナゾの女の正体が、所司代の腰元で、実は天狗方のスパイだった・・・という第二の意外性は、どうにもつじつまが合わない。

 それではなぜ、杉作や吉兵衛が被害にあうのかわからないからだ。こども向きにつくったものでも、作劇はちゃんとしてもらいたい。大体、「鞍馬天狗」は、オトナが読んでもおもしろいものだが、映画になるといつも、こども本位になってしまう。オトナが見ておもしろく、こどもがみれば、なお、おもしろいという作り方は出来ぬものか。ずっと上出来ではあるのだが・・・。(キネマ旬報より)

興行価値:題材が古い。鞍馬天狗も現代的に解釈してシナリオの段階で考える必要があろう。70%台。

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大仏次郎作「鞍馬天狗」シリーズは朝日文庫・徳間文庫等で読める。

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