眠狂四郎女地獄

1968年1月13日(土)公開/1時間22分大映京都/カラーシネマスコープ

併映:「悪名十八番」(森一生/勝新太郎・田宮ニ郎)

企画 奥田久司
監督 田中徳三
原作 柴田錬三郎
脚本 高岩肇
撮影 森田富士郎
美術 内藤昭
照明 中岡源権
録音 海原幸夫
音楽 渡辺岳夫
助監督 勝呂敦彦
スチール 大谷栄一
出演 高田美和(小夜姫)、水谷良重(お園)、田村高廣(成瀬辰馬)、小沢栄太郎(堀妥女正)、伊藤雄之助(野々宮甚内)、阿部徹(稲田外記)、渚まゆみ(しのぶ)、三木本賀代(杉江)、しめぎしがこ(盲目の女)、草薙幸二郎(関口)、北条寿太郎(渡辺)、五味竜太郎(田所源次郎)、寺島雄作(刀屋)、織田利枝子(おちか)、岡島艶子(一軒家の老婆)
惹句 『裸女、迫りきて闇に燃え邪剣、襲いきて雪に舞う憎い素敵な狂四郎

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【作品解説】

 “眠狂四郎”シリーズは、冴えわたる虚無の剣円月殺法の魅力と眠狂四郎をめぐる妖艶な女たちの強力なエロチシズムで好評の市川雷蔵のヒット・シリーズですが、第十作目の『眠狂四郎女地獄』もこれまで以上に剣とセックスの魅力を十二分に盛り込んだ娯楽時代劇です。

 ものがたりは密使暗殺を目撃した狂四郎が姫をめぐって権力斗争を続ける佐伯藩、城代家老、国家老両派の争いの渦中に巻きこまれたことから始まります。密書と姫の秘密を握る狂四郎の行手には、両派からの魔手が迫ります。あるときは地獄に誘う女の柔肌が、あるときは、白刃の殺気が・・・しかし、抱いて冷ややか、斬って凄絶、危機を前に円月殺法は鮮やかな冴えをみせます。

 罠と知りつつ女を抱き、背後の敵を断つ雷蔵狂四郎は、黒の着流し姿も颯爽と相変らず剣に女に無敵ぶりを発揮します。権力争いの中心となる小夜姫には、大映の秘蔵っ子スター高田美和が扮して珍しく男装も披露します。また対決せねばならぬ立場ながら、狂四郎と奇妙な友情かわす両派の剣客には、田村高廣、伊藤雄之助が出演、父を討たねばならぬ運命の剣客と仕官を夢みる素浪人を演じ、狂四郎と強烈な殺陣をみせます。争う家老は小沢栄太郎、阿部徹がそれぞれに渋い味を出します。妖しいお色気ですっかり有名になった狂四郎ガールズには水谷良重、渚まゆみ、三木本賀代、しめぎしがこなどが顔をそろえて雷蔵狂四郎を大いに悩ませそうです。また演技研究所出身の新人、水町由香里、丘夏子、織田利枝子がフレッシュな顔をみせています。

 メガホンは、このシリーズ第一作を演出し生みの親ともいうべき田中徳三監督がとり、鋭い感覚で定評のある森田富士郎カメラマンとのコンビでクールな狂四郎ムードを描き出します。(公開当時のプレスシートより)

 田中徳三監督が第一作『眠狂四郎殺法帖』以来久々にシリーズに復帰した第十作。脚本は前作に引き続き高岩肇が執筆した。  冬景色を背景に、狂四郎と二人の剣客・成瀬辰馬(田村高廣)と野々宮甚内(伊藤雄之助)の対決が抒情的に描かれた。 

 開巻、編笠姿の狂四郎が成瀬ら稲田派の一行と遭遇する際の荒涼としたムードががまず出色。それに狂四郎と角兵獅子の姉弟のエピソードは、雷蔵の爽やかな表情もあり久々に心温まるものとなった。しかし「狂四郎に関わった者は皆不幸になる」という不文律が生き、姉弟が斬られるのは辛い展開である。 

 またクライマックスの辰馬の壮絶な最期、それに狂四郎と采女正一派の戦いは、正月作品らしく降りしきる雪の中で繰り広げられた。『勝負』でも初雪が降る中での対決があったが、積雪での殺陣はシリーズ中でも珍しい。ただ、キャスティング主導というプログラムピクチャーの宿命のためか、辰馬と甚内の描き分けが演じる俳優の個性に準じた類型的なものに収まってしまい、多少の物足りなさを感じるのは否めない。

 可憐な小夜姫に高田美和が扮し、凛々しい若侍姿の変装も見せた。また狂四郎に思いを寄せる居酒屋の女として水谷良重が出演しているが、物語の本筋に深く関わってこないため今ひとつ影が薄いのは残念だ。他に狂四郎に罠を仕掛ける女たちとして、渚まゆみ、三本木賀代、しめぎしがこらが出演し妖しい魅力を発した。それに、対立する堀采女正と稲田外記に悪役として名を馳せた小沢栄太郎と安部徹が扮しているのも一興であろう。

【梗 概】

 荒涼とした北国を旅する狂四郎は、駆け行く馬上の密使が武士の一団に襲われ、書簡を奪われるところに出くわした。斬られた密使は死ぬ間際、狂四郎に紅い鹿の子しぼりの手絡を託した。先の一団が奪った密書は偽物であった。

 その直後、狂四郎は追いはぎに襲われた角兵獅子の姉弟を救った。狂四郎は可憐な姉娘に件の手絡をを」与えるが、それが元で姉弟は何者かに惨殺された。手絡には、権力抗争に明け暮れる佐伯藩の国家老・堀采女正と城代家老・稲田外記の行く末を左右する重要事項が記されていたのだ。己の軽率な行動が姉弟の死を招いた悔いた狂四郎は、姉娘が残したお守りを佐伯城下にいるという姉弟の兄に渡すため佐伯藩に足を向けた。 

 佐伯城下に向かった狂四郎は堀、稲田の両陣営から命を狙われた。一夜の宿で狂四郎を誘う女の柔肌の罠、虚無僧姿の刺客の群れ、毒蛇使い…。その際に狂四郎は、密使を斬った外記の剣客・成瀬辰馬、采女正に付いた奇怪な剣の使い手・野々宮甚内、それに両派の間に入り争いを止めようと江戸表から馳せ参じた男装の小夜姫と出会った。狂四郎、辰馬と甚内の三人は剣を通じて奇妙な友情を感じ合う。激化する両派の争いに巻き込まれた狂四郎は、やがて成瀬、野々宮と白刃を交えることに…。

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歴史読本1994年11月特別増刊号[スペシャル48]RAIZO 『眠狂四郎』の世界に詳しい。また、シリーズ映画「眠狂四郎シリーズ」参照。

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