眠狂四郎人肌蜘蛛

1968年5月1日(水)公開/1時間21分大映京都/カラーシネマスコープ

併映:「女賭博師鉄火場破り」(井上芳夫/江波杏子・成田三樹夫)

監督 安田公義
原作 柴田錬三郎
脚本 星川清司
撮影 武田千吉郎
美術 下石坂成典
照明 古谷賢次
録音 奥村雅弘
音楽 渡辺宙明
助監督 太田昭和
スチール 大谷栄一
出演 緑魔子(紫)、三条魔子(須磨)、川津祐介(土門家武)、渡辺文雄(都田一閑)、寺田農(薬師寺兵吾)、五味竜太郎、三木本賀代
惹句 『狂四郎の生首がほしい犯せと誘う熱い肌生きて帰れぬ猟奇の館地獄でみせる円月剣』

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■ 作品解説 ■

 この『眠狂四郎人肌蜘蛛』はいうまでもなく爽快な剣の魅力としびれるようなエロチシズムで好評を続けている市川雷蔵のヒット・シリーズ“眠狂四郎”の第十一作であります。

 母の墓参に甲府に立ち寄った眠狂四郎は、将軍の妾腹の子という権力をカサに、暴虐の限りを尽す家達、紫の兄妹を知り、敢然と挑戦します。そして兄妹一派の放つ刺客、罠秘めた甘美な肌が次々と狂四郎を狙い、死に誘います。果たして狂四郎の行手は地獄か悦楽か、・・・・・スリルと興奮に満ちたシーンの連続で時代劇ファンを満足させずにはおかぬ超娯楽作品です。

 お色気シーンでは、情欲に狂う紫が狂四郎に見せる妖しい痴態、病を装い狂四郎に近づく女や、奸作を隠し言い寄る門付け女とのお色気模様など、むせかえるようなエロチシズムがいっぱいです。

 また、円月殺法の見せ場も、大男蜘蛛手の鉄棒との対決、毒矢の集中攻撃と火煙攻めやいろいろと工夫がこらされています。このほか紫兄妹が残虐さをみせる闘技場での村人虐殺シーンや拷問シーンや裸女十字架など、このシリーズならではの魅力を各所に折り込んで興味を盛り上げています。

 犯すもよし斬るもよし、雷蔵狂四郎が円月剣の冴えを見せるほか、大映京都初出演の緑魔子が、紫に扮して狂四郎ガールズの仲間入り、大胆な艶技を見せてくれます。また古巣に帰った三条魔子が妖しいムードを発散すれば、川津祐介、渡辺文雄らが円月剣と対決してハッスルします。このほか、狂四郎ガールズですっかり名前を売った三本木賀代、新人小林直美らが負けじと演技を競います。メガホンは、このシリーズ三度目で、狂四郎ムードを知り尽くした安田公義監督が握り、ヒット確実な娯楽作品として十分期待できます。(公開当時のプレスシートより)

 

 久々に星川清司が脚本を担当したシリーズ第11作。シリーズの中でも群を抜く猟奇度で異彩を放つ作品。監督は『円月斬り』『魔性剣』の安田公義。

 今回狂四郎と対するのは将軍家斉の妾腹の双子の土門兄妹。淫楽殺人に狂う美貌の妹。紫と、彼女に道ならぬ恋情を抱く兄・家武である。かつての星川作品には、第二作『勝負』の浪費と美男遊びに狂う高姫(久保菜穂子)、第三作『円月斬り』の刀剣マニアの片桐高之(成田純一郎)、それに第四作『女妖剣』と第七作『多情剣』に登場した己の醜い顔を呪い美しい者を嫉む菊姫(毛利郁子)などの歪んだ性格の将軍庶子が登場したが、本作の土門兄妹はその集大成ともいえる異常ぶりである。

 本作品では、狂四郎が不覚にも土門家武が放った毒矢を受け生死の境をさ迷う、という件がある。森の中で体を横たえた狂四郎は青空を見上げ、「これが俺の見る最後の空の色か・・・」と呟く。死に直面しても相変わらずクールな狂四郎が印象的だ。しかし、この後、九死に一生を得た狂四郎が、女が勧めた酒に毒を感じたのか異常な警戒を示す姿が描かれ、狂四郎が並々ならぬ恐怖を味わったことが暗示された。本作は狂四郎がかつて体験したことのなかった程の危機に瀕した物語だといえるだろう。

 紫に扮した緑魔子は当時東映の専属であった。しかし大映に『大悪党』(1968)『盲獣』(1969)などの増村保造監督作品に主演格で招かれ、それが彼女の代表作となった。白塗りのメイクで家武を怪演した川津祐介もまた増村作品の『赤い天使』(1966)で強烈な印象を残している。狂四郎と同じ黒ミサの子・薬師寺兵吾を寺田農が熱演。狂四郎の窮地を救うが実は腹に一物を抱く幕府目付け役の都田一閑を渡辺文雄がクールに演じた。また『魔性の肌』以来連続出演の三木本賀代、それに三条魔子がシリーズお約束の色仕掛けで狂四郎に迫った。

■ こぼればなし ■

 この日の撮影は、罠を秘めて近づく偽癩の女とのシーンだ。謎の女は業病癩をよそおい狂四郎の興味を誘い、あばら家にしつらえた蚊帳の褥で、着物をひもどき、狂四郎を招く。愛撫に女がもだえ身を開いた瞬間、刺客の手槍が狂四郎に向って襲いかかる・・・といった剣とセックスの魅力あふれるシーンだ。

 偽癩の女に扮する三本木賀代は『眠狂四郎魔性の肌』『眠狂四郎女地獄』と連続三本の出演ですっかり狂四郎ガールズのムードを知りつくした感じだ。惜しげもなく肌をみせての演技ぶり。これには、安田監督以下スタッフも感心するやら驚くやらだ。

 一方の雷蔵も、過去十作で、延50余名の狂四郎ガールズを抱いたり犯したり、この道にかけては、超ベテランぶりを誇るだけあって冷ややかな狂四郎スタイルそのままで、三本木の身体を抱きよせ責めていく。青い蚊帳の中でうごめきもだえる白い肌が、何ともいえぬなまめいた雰囲気を出す。切なげな声が、セットを包んで、いやはや、独身のスタッフには、目の毒、気の毒といったシーンだ。

 初日早々からお色気ムードに雷蔵は「これだから狂四郎はやめられない。このあとも緑、三条の両魔子さんとのカラミもあるし、楽しみだ」とすっかりご機嫌な様子だったが、またまた映倫のおえら方を悩ますシーンの連続となりそうだこの日の撮影ぶりだった。(ちらしより)

■ 梗 概 ■

 江戸への帰途、狂四郎は気まぐれから母の墓参に甲府の村に立ち寄った。村の上空にはおぼただしい数のカラスが舞い、その周辺は只ならぬ気配に包まれていた、この辺りでは将軍家斉の妾腹で双子の兄妹、土門家武と紫が権力を笠に着て暴虐の限りを尽していた。兄の家武は闘技場で村人をなぶり殺しにし、妹の紫は色欲に狂いその挙げ句に相手を惨殺するという非道ぶり。村人らは彼らの屋敷を鬼館と呼び、恐れ慄いていた。

 今また、墓守の七蔵が育てた狂四郎と同じ混血児の薬師寺兵吾が鬼館から呼び出しを受けた。兵吾に自分と同じ黒ミサの子の宿命を見出した狂四郎は、兵吾の身代わり鬼館に出向いた。紫は高貴な肌をあらわに狂四郎を誘惑するが、狂四郎は冷笑をもって答えた。紫の従者・大男の蜘蛛手が揮う鉄棒、それに幾多の弓矢、手槍が狂四郎の行く手をさえぎるが、狂四郎はそれを難なくかわし館を後にした。

 妹を愛するあまり激しい怒りに燃える家武、それに紫に使えし老女・楓。彼らは揃って打倒狂四郎を誓い、次々と地獄の罠を仕掛ける。難病やみの武家女、艶やかな門付け女の色香、それに南蛮渡来の秘薬を仕込んだ家武の毒矢。狂四郎の身にかってない危機が迫った・・・。

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 歴史読本1994年11月特別増刊号[スペシャル48]RAIZO 『眠狂四郎』の世界に詳しい。また、シリーズ映画「眠狂四郎シリーズ」参照。

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