若親分兇状旅

1967年8月12日(土)公開/1時間24分大映京都/カラーシネマスコープ

併映:「座頭市牢破り」(山本薩夫/勝新太郎・三国連太郎)

企画 奥田久司
監督 森一生
脚本 高岩肇
撮影 今井ひろし
美術 太田誠一
照明 山下礼二郎
録音 海原幸夫
音楽 鏑木創
助監督 大洲斉
スチール 小山田輝男
出演 江波杏子(小山千代子)、葉山葉子(北川早苗)、都はるみ(あけみ)、藤巻潤(井川少佐)、渡辺文雄(土屋信之)、垂水悟郎(金杉弥三郎)、永田靖(俵藤雄介)、五味竜太郎(川上)、丸井太郎(辰)、仲村隆(為次)、加藤嘉(宗念)、島田竜三(矢部少佐)、平泉征(北川明)、石黒三郎(高木少佐)
惹句 『同期の桜が謎の割腹罠をしかけた黒幕を俺が探してぶった斬る怒り狂って冴えわたる海軍しこみの抜刀術

 

■ 解 説 ■

 『若親分』シリーズ七作目は、今迄とはちょっと趣きの変ったスリラータッチの任侠篇。市川雷蔵ふんする颯爽とした若親分ぶりに加えて、藤巻潤が大映レコード第一回発売作として吹き込んだ主題歌「若親分」「残侠いっぴきの唄」がバックに流れるのも楽しみです。 

■ 梗 概 ■

 一匹狼の南条武が軍港に近いその港町に現われたのは、海軍以来の親友高木少佐が原因不明の自決をして間もなくのことだった。海軍ゆかりの禅寺・浄閑寺に仮の宿をとった彼は、事件の解明のため、わざと土地のボス土屋子爵をゆすったり、土建屋小山組の者に喧嘩を吹っかけたり、その小山組の若い女親分千代子の鼻をあかしたりした。またこの武に恨みを抱く黒門組が彼を追ってきているので、いざこざの種はつきない。

 黒門組と兄弟分の金杉弥三郎は、海軍時代の武の部下で、いまは運送業を看板にする渡世人だった。武の気っぷに一目おいている金杉は、彼を客分として招こうとするが、武は金杉も事件に関係ありと睨み、その招きを断った。

 さらに武は高木の下宿で、女主人の姪、早苗、なじみの飲み屋、「月ヶ瀬」で亭主の為次や妹あけみなどと会い、高木の自決前後の言動を尋ね歩いた。

 彼はまた、路上で黒門組と派手な乱闘を展開したあと、見違えるほどあでやかな千代子と出会った。その千代子の人力車の提灯が三楽亭、金杉の事務所で目についたマッチも三楽亭であることから、武はその料理屋にさぐりをかけるが、背後の謎の人物は判らなかった。武の探索が進むにつれ、金杉から半ば脅迫的、半ば好意的にこの土地を離れることをすすめられるが、かえって武の闘志は高まっていった。

 武が独力で高木の死の真相をさぐっているのを知った海軍の親友井川少佐は、協力を申し出るが、ことを海軍及ぼすことを恐れる武は「市井無頼の徒である俺にまかせてくれと」と断るのだった。

 間もなく、武は金杉につながる東西汽船の社長丸尾を探り出し、三楽亭で金杉を待つ丸尾を脅して、金杉らが、高木の紹介で汽船を買い、武器弾薬の密輸を企てている事を知った。利用されたと知った清廉な高木は、それを恥じて自決し、金杉一味がその証拠隠滅を計ったことも、早苗の情報から推察された。

 遂に来るところまで来たと、武の推理をせせら笑う金杉、代貸し松五郎を先頭に大挙して乗り込んできた黒門一家に、武の闘志はますますかき立てられた。その夜、三楽亭には俵藤、土屋、金杉らの死の商人が集り、祭の宵宮を利用して密輸船を出す謀議をしていた・・・。(大映グラフNo.48より)

残侠いっぴきの唄

作詞:鈴木信雄 作曲/編曲:浜村はじめ 唄:藤巻潤

一、 さすらいの さすらいの さすらいの
残侠いっぴき 揚花火
かわいい早苗は こぼれ花
南条武の 胸で咲け
二、 冴えわたる 冴えわたる 冴えわたる
海軍仕込みの 抜刀術
仁義渡世の 為ならば
南条武の 腕は鳴る
三、 はるばると はるばると はるばると
残侠いっぴき いそぎ旅
雨がふるやら 嵐やら
南条武よ どこへ行く

    

若親分兇状旅

飯田心美

このシリーズもこれで七本目となったが今回は出来としてはいい方といえる。軍港近くの港町を舞台にしたあたりはいつもと変わらないが、プロットとしてはムリがない。原因不明の自殺をした海軍時代の友人高木少佐の死因を主人公の若親分がさぐるのが本筋で、これに武器密輸事件がからむ。

 時は大正初期、日本が大陸に進出していた頃だから、売込み先を満蒙にしたあたりもうなずける。その満蒙に散在する、地方軍閥を戦わせ、双方に武器弾薬を売込もうという奸商の魂胆だ。この商略にハメられて高木少佐は輸送船買取りの仲立ちをし、後に真相を知って潔癖感から自決したわけだ。

 これをつきとめるために海軍上がりの任侠渡世、南条武は苦心する。そして最後にその奸計をたくらんだ俵藤、土屋、金杉らを片づける。本来なら警察に知らせれば検挙となる事件だが、田舎町で羽ぶりをきかすボスや政界黒幕だから、手に負えず主人公の手で仕とめた、という含みだろう。子分をふくめれば大陣営をはる敵を、たったひとりで片づけてしまうのだから、まさに超人的だが、そこがこのシリーズのおもしろいところで、その不自然さも大時代的な扱いで隠している。いって見れば、浪曲調のセミ時代劇という明治やくざ劇の系統である。

 以上の本筋に枝葉が二つ三つまじる。一、やくざの足を洗い堅気になった兄妹の話。二、海軍時代に猛訓練で死んだ兄を南条扱いと思いこみ恨んでいる早苗の話。三、亡き父が悪ボス土屋の恩義を蒙り、義理を感じて縛られている小山組の女親分の話などである。それらは時に南条にとって本筋究明の助けとなり、または人情的な柔らか味の供給所となる。それだけにそれらには配役も工夫がこらされる。たとえば一の話の兄妹に仲村隆と都はるみ、二の話の早苗に葉山葉子、三の話の女親分に江波杏子、といった具合に本筋と別ないろどりが添えられる。一種のサービスにちがいないが娯楽物にありがちな、無意味な登場とせず、それらしい役付けをしているのが好感をおぼえさせる。中で出色なのは江波の使い方で、昼間は土建の仕事場で、子分たちをどなりつける男装の現場監督で見せた後、夜は色香あふれる和装姿の美女にしたあたり、趣向としてもおもしろい。この変身ぶりには主人公も目を見張る。都はるみも歌手志望の小料理屋の妹として、得意の歌を一曲唄う。

 本筋の方では、以前海軍仲間だった金杉とのやりとりが中心で、鬼兵曹といわれた金杉が、主人公を敵にまわしたくない気持ちをもちながら、次第に対峙せざるをえない立場に追い込まれるのが悪党心理として変っている。

 また探査の協力を申出る戦友井川少佐を断り、あくまで自分ひとりで事件を解決、海軍に累を及ぼすのをさけて最後に自首の決心をきめる主人公の行動も、海軍出身の一匹狼らしいかたちで颯爽たる感じである。森一生監督はこのシリーズはじめての担当だが、主演者雷蔵のタイプを巧く生かし要領よくまとめた。興行価値:ムリなく、ムダなく、娯楽作品としてはいい方のできである。が、宣伝の不足はいかんともしがたく、興行価値70%。(キネマ旬報より)

詳細は、シリーズ映画「若親分シリーズ」参照。

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