祭ばやし

 

鳶 頭 松 吉    市 川 寿 海

鳶 頭 清 吉    市 川 雷 蔵
芸 者 お美代   淡 島 千 景

 

 

 

 

 花のお江戸の御祭礼、中でも華やかな神田祭。名物の山車を引く意気で勇ましい鳶の者や、手古舞姿の芸者、町娘などが街々に集って大層賑わっている。

 鳶頭の清吉と芸者のお美代は、互いに好いて好かれた仲だった。その仲睦じい二人をひやかして行く鳶頭の松吉。

 祭の酒に興がのった清吉が、廓通いの様子を語るのでお美代は女心に清吉をかき口説く。

 “喧嘩だ、喧嘩だ”という声、どこかで祭につきものの喧嘩が起ったらしい。お美代の止めるのも聞かず清吉は駈け出して行く。その清吉の身を案じて、祭の群衆の中を抜け出して、お美代は後を追うのだった。

 どうやら喧嘩も納ったらしい。やがて激しく夕立が降り出した。柳の下で雨宿りをする清吉にそっと後から傘をさしかけるお美代、雨の柳橋に相合傘の二人はぴったりと寄り添っていた。