(保津川下りコースマップより)

 
 この二、三日前に京都上賀茂神社境内でのロケは、今日よりもっと汗かきものだったそうです。このロケは二日間で、映画の始めの方にコミカルな立廻りがありましたね、いろいろ小道具をつかったあれです。お笑いたっぷりな凝った立廻りのほかに、雷蔵さんの出番は淡路さんにからみつかれて、ほうほうのていで逃げて行くオチまでついているんですから、大変々々。

 そのため、雷蔵さんはマホー瓶に詰めて持参してきたジュースをすっかりカラにしてなお足りない顔付き、淡路さんも撮影の合間にブッカキ氷をかじりかじり、ほおばったままテストに出るなど、微笑ましいロケ風景だったとの事です。

 

上賀茂ロケでの立廻り

 
 私のロケのぞ記も紙面の関係でどうやら終りに近づきました。ロケではないのですが、翌日はセットで玉緒ちゃんと花火を見るシーンの撮影です。天然色だけに花火の色を出すのに何回もダメが出たり、天井にあるライトに、赤や青のゼラチンをかけ、つけたり消したりして音は後から入れるそうです。たった一カットでも、スタッフ、キャストのイキが合わないと出来ないお仕事ですね。

 そしてその翌日は、スイカを食べるシーンが撮り直しで前と同じようなセットを組むのに大変だそうで、その日から二日後に撮り上げなければ封切りに間に合わないんで、今日から徹夜ですと・・・。なにかの週刊誌の対談で、雷蔵さんが完全に四十八時間の徹夜と云っておりましたが、こうした事はよくあるそうですよ、セットを作り直している間に家へお帰りになって休めばいいのに、と思っておりましたら、森本さんが、そうさせようと思ったんですがね撮影所にいないといつどうなるか、それにルーム・クーラーがついているから、こっちの方が涼しいですよ。今横になっていますよとの事。

 雷蔵さんもお疲れになるでしょうね。私の落合へロケを見に行って靴ずれが出来て、足はバンソーコだらけ、雷蔵さんの足も連日のロケでワラジずれが出来て、両足の指にマーキュロがぬってありました。

 さてさて、これで私のロケのぞ記も終りました。暑いお話で申し訳ありませんでした。次の機会にはもっと面白い記事を取りたいと思っております。(安部)

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セットでの立廻り

 

 

 
 丹波山地によくあるチャートは密度が高く硬いという特徴があり、よく急崖を形成する。ここ保津峡にはその例が豊富に露出している。岩には洪水で運ばれたとされる岩ツツジが点々と生え名物となっている。六月頃にはよく目立つ明るいオレンジ色の花をつける。

 落合は名の通り二つの川の合流点で、この崖下で三尾を流れてきた清滝川が保津峡左岸に入る。

 また、落合は清滝川の河口でもある。清滝川はほぼ上流域の川相のまま保津峡へ流れ込む。深い谷を刻んでの流入で、両岸は切り立った崖となっている。

 保津峡には舟運の船が亀岡へ帰る際に人力で船を引っ張り上げた桟道が残っている。砂地の少し上に細かい玉石が規則的に積まれている部分がその名残である。水の少ない時期なら伝って行ける。こうした岩場を使って時代劇が撮られるが、設定は圧倒的に街道筋が多い。

保津峡左岸

清滝川左岸 清滝川右岸
清滝川河口左岸 清滝川河口右岸(通称書物岩)