昭和32(1957)年9月発行のアサヒグラフ別冊・秋の特大号 “映画と演劇”-特集 時代劇と西部劇-

 
 セットの技術も撮影の技術も進歩して、たいていのものはスタジオかオープンで間に合うという今日でも、ロケーションはなくならない。セットでは迫力が出ないということもあれば、経費節約ということもある。宣伝効果をねらって、という場合もある。が時代劇となると、どこでもというわけにはいかない。

 チョンマゲの人さえもってくれば、すぐに間に合うというのは何といっても京都。その京都と東京との主なロケ地を、スチールをたよりに歩いてみた。(説明の後の題名はスチールの映画)

 

 二条城の二の丸御殿 京都市中央区二条通 京都の近くで城といえば、ここだけ。まわりには時代劇向きでない家並があるが、カメラの位置を低くすればかくすこともできる。時代劇には、くり返し出てくるおなじみの京都の代表的ロケ地の一つである。(『恋風街道』)

 

(あいうえお順、各地の詳細は公式HP参照、市バス・京都バスとも京都駅から)

日吉大社

 日吉大社境内 滋賀県大津市坂本。天然色撮影では京都の平安神宮に次ぐ好適地。初めて『新平家物語』出使って効果は満点だったとのこと。今後も盛んに使われるだろう。

 


琵琶湖雄松

 滋賀県滋賀郡小松町。時代劇には頭痛の種の電柱が一本もなく、家もない。但し、夏はキャンプで賑わうので時代劇はダメ。京都付近唯一の大松林。『大菩薩峠』

嵐山落合(保津峡

 京都市右京区嵯峨亀ノ尾町。保津川の峡谷なので機材の運搬は大変だが、岩上を飛び交うチャンバラなどにはもってこい。各社がよく使う場所の一つ。『さけぶ雷鳥』

嵐山藤原堤

 京都市右京区西ノ藤町。桂川の中洲である。京都の各撮影所からは一番近くて手っとり早い河原のロケ地なので、各社が盛んに使っている。『晴れ姿稚児の剣法』

梅宮大社(旧称梅宮神社)

 

 京都市右京区梅津フケノ町。これまた時代劇のために造ったような絶好の地。右手の門の電柱はカメラの角度でかくすことができる。『怪談番町皿屋敷』

天竜寺

 京都市右京区嵯峨馬場町。この風景がそのまま時代劇のセットだ。どんな場面もスッポリおさまる万能のロケ地。見物人と雑音が多いのが欠点。『大江戸人気男』

南禅寺

 京都市左京区福地町。武家屋敷などにはもってこいの土塀。見物人も少なく、電柱もない。静かなので現地録音もできるほどだそうである。『雪姫七変化』

吉田神社裏山の稲荷

 京都市左京区神楽岡町。江戸時代のスリラーものなどにピッタリ。雑音も少なく、人通りもないので撮影は案外楽だということである。『素浪人日和』