『浮かれ三度笠』の左から市川雷蔵、左幸子、本郷功次郎
 ☆将軍吉宗は、世つぎ争いのことから自分を恨んでいる尾張大納言宗春の心をやわらげるため一策を思いつく。それは宗春の娘菊姫(中村玉緒)とオイの松平与一郎(市川雷蔵)を縁組みさせることだ。ところが菊姫は与一郎がウスノロだという噂を聞いて家出、与一郎は花嫁候補に逃げられてはと後を追っかけるという話。脚本松村正温、監督田中徳三。

 ☆雷蔵の与一郎がヤクザ姿になっているため、姫もまさか縁組の相手だと気づかず、当の本人を前にして棚おろしをやる。町人娘に化けた姫の正体をとっくに承知の雷蔵は、堂にいったヤクザっぷりで未来の花嫁をさんざんからかう。中村玉緒も軽妙で、すっとぼけた味の雷蔵とよくイキがあい、この二人のやりとりの飄逸さが身上だ。田中監督は軽快で意欲的な演出だが、前作『濡れ髪三度笠』ほど魅力がない。やはりこの種のものは筋そのものがよほど奇抜でなければ、現代の流行語などをいくらとりいれても表面的なくすぐりに終わるからだろう。B級。1時間45分。色彩ワイド。大映(人見嘉久彦)上映中