『浮かれ三度笠』をみて

 『浮かれ三度笠』大変面白く拝見しました。前作濡れ髪と同じ道中物ですが、こちらは殿様とお姫様の変装道中。登場人物も様々で、ふきだして居る中に一巻の終り。目出度く姫と若君は結ばれて、お定まりの娯楽映画乍らも、田中監督の新しさを出そうとした意欲と、前作に劣らぬカラーの美しさは、充分楽しめました。

 雷蔵さんの“やらずの与三郎”は春風たいとうのお人柄が画面ににじみ出て、ユーモラスたっぷりな表情に一緒につられてふきだしてしまう場面もあり、雷蔵さんに負けじと、菊姫の玉緒さんの達者な芸で画面にひき込まれ、快適なテンポであっというまにお江戸から名古屋に。み終って、いつもは殿様姿が印象に残るのですが、やくざの若様与三さんがとても素敵で、魅力的でした。やくざはやくざでも、前作とは違った味をみせ、意欲的な雷蔵さんの芸熱心に敬意を表します。

 田中・雷蔵コンビの娯楽映画のマンネリにならない様、常に新鮮な笑いを贈って下さる様、今後を期待して筆をおきます。 (城 みゆき)

 粋で陽気な旅烏やらずの与三郎・武骨な忠臣楠見兵馬・勝気で茶目な菊姫。またまた雷蔵・功次郎・玉緒の三コンビに新進田中徳三監督快調のメガホン、三度笠シリーズ、若さに満ちた時代劇、終始爆笑の連発のユーモアに富む作品でした。

 徳川吉宗対尾張大納言の政権争いを背景に、松平與一郎と菊姫の縁談が事件の発端となり、連判状の争奪を巡り、道中大騒動を演じる筋書はお定まりのコースと言えますが、若い世代に受ける様に現代調を多分に盛込んだ所に、此の映画の新鮮味があると思います。

 前作の濡れ髪半次郎のスタイルと寸分たがわぬ雷さん扮する処の与三郎!洒落と機敏がすLるかり板につき、彼独特のニューモードが、色彩豊かなスクリーンと相俟って、魅力をグット引きつけます。『かげろう絵図』『薄桜記』と厚味のある作品の後だけに、ファンにとって肩の重荷が解けた感じです。

 今後三本に一本の割合いで三度笠級の喜劇に出演し、雷さんの三枚目ぶりを大いに発揮してもらいたいものです。

 最近めきめき売り出した功次郎の兵馬は、努力の程が窺えますが、やや堅苦しい点があり、尚剣に冴がないのが惜しいです。玉緒は役を得て好演、特に気違い娘の真似は堂に入っていました。

 何はともあれ、とやかく理屈や文句を並べてみる映画ではなさそうです。 笑い納めに相応しい雷さんのサービスを面白く見せてもらっただけで十分満足です。 (M・S生)

 

(よ志哉14号 01/25/60)

 

   

 

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