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 大映多摩川撮影所で『お嬢さん』(監督弓削太郎)をとり終えた若尾文子は、休む間もなくこんどは京都作品『好色一代男』(監督増村保造)に出演のため京都へやってきた。彼女の時代劇出演はもはや珍しいものではなくなっているが、この作品に寄せる彼女の期待は大きく、市川雷蔵とのコンビにまつわる話題も多い。そこで、衣装合わせにやってきた若尾文子を京都撮影所に訪れて、この作品への抱負と近況を聞いてみた。

  ━京都へはこのところひんぱんにやってきますね。

 そうね。この前が『花くらべ狸道中』で、その前が『安珍と清姫』、そしてその前が『ぼんち』とちょっとつづいています。お正月の間だけ東京にいて、また京都にきたというところで、そろそろ京都に移籍されるんじゃないかな。(笑)

  ━こんどの役は?

 夕霧太夫というおいらんのですが、雷ちゃん(市川雷蔵)の相手役で、出る十数人の女性のなかでは一番まともで、最初から最後まで一貫して登場します。入れかわり立ちかわり世之介の前に現われては消えてゆく女たちのなかで、最後まで世之介を愛しつづける女。金のために右往左往するおいらんのなかにいながら、世之助への愛情を胸に秘め、最後には捕り方に追われる世之介を海のかなたへ逃がすために、目前にいる世之介には声もかけずに捕り方のヤリに突き殺されて死んでしまうの。純情なのね。前作の『お嬢さん』でも純情なお嬢さんをやっているし、このところ純情娘についてる。(笑)

  ━雷蔵さんとの共演もだいぶつづきますね。

 雷ちゃんは実力があるから、こっちが全力でぶつかっていってもがっちり受け止めてくれる。その点とても楽しみ。作品はさいきん京都へきてとった作品の全部が雷ちゃんを相手にしたものでしょ。一作ほとにいつも収穫があるので、こんども自分にないものを引出してみたいの。

  ━雷蔵さんとの結婚話があちこちに流れていますが?

 そんなの全部デマよ。共演作がちょっとつづいたり、ラブシーンが強烈だったりすると、すぐそんなデマが飛ぶけれど、わたしにも雷蔵さんにも、むろんそんな気持ちがあるわけありません。そりゃわたしだって女ですから、いずれは結婚したいと思っていますが、残念ながらまだ適当な相手が見つかっておりません。

 若尾はこのあとふたたび東京へ帰ると『女のつり橋』(監督木村恵吾)、『裸体』(原作永井荷風)、 『女体』(原作斎藤米次郎「シュワンツ」より、脚本白坂依志夫)と仕事が矢つぎばやに待っている。「これじゃ恋愛するヒマがないかな」と微笑する彼女である。

 (02/17/61)