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 慎重な準備を進めてきた大映京都作品『ジャン有馬の襲撃』(監督伊藤大輔)は、このほど打合せやロケ・ハンも終わって、いよいよセットからクランクを開始した。

 主演の青年大名有馬晴信(洗礼名ジャン・プロタシオ)にふんする市川雷蔵は『次郎長富士』の吉良の仁吉をあげたばかり。「やくざから一足飛びに大名になりましたよ」と苦笑いしながらも、「でに男らしい信念の強い役柄だけにはりきっています。ただ心配なのは船中での立回り。外人相手ですからフェンシングを使うわけで、これをどうするか頭を痛めています」という。

 伊藤監督もこの船中の激闘にヤマを持ってゆく考えらしく、「スペクタクルとしての魅力も出したい。殺陣師と相談して新味を出しますよ」と、そこはベテラン監督、余裕のある態度だ。「雷蔵クンのやるジャン・有馬は九州の大名で実際の年齢は三十代だったらしいんですが、映画では二十代、水もしたたる青年大名の活躍ぶりを強調します。若さと気品、それに従来の大名になかったハイカラなものも出したいと思っているので、雷蔵クンはぴったりの配役ですよ」と、『弁天小僧』いらい彼にはベタほれしている伊藤監督である。

 雷蔵のふん装も、いまもって歴史に残る天草四郎の肖像を参考にしたもので、このほか多くのキリシタン武士のつくりを適宜取り入れた。そのためにあさった古文書だけでも膨大な数にのぼるというが、さてでき上がった雷蔵のりりしい姿は、そんな苦労もわすれさせるほど、伊藤監督を満足させたようであった。

 

西スポ 05/31/59