u@

 『ジャン有馬の襲撃』は1609年徳川家康治下、そのころ日本の南方貿易の拠点であったポルトガル領マカオ港における日本人虐殺、御朱印船焼打ち事件の報復として、九州島原のキリシタン大名有馬晴信が長崎に入港したポルトガル船に奇襲を加えて、焼打ちにした歴史的事件を監督伊藤大輔が脚色したもの。

 ジャン・有馬とは、有馬晴信のクリスチャン・ネームであるジャン・プロタシオからつけられた。この企画は、伊藤監督が十数年前から海上スペクタクルを狙って腹案していたものだという。映画化に当ってポルトガルはイベリアという仮想国に、マカオもチュウキャンという海の名前に置きかえ、"イベリア人"が使う言葉もエスペラント語を使うなど慎重に進めている。エスペラントが日本映画に登場するのは初めてで、アメリカ映画ではチャップリンの『独裁者』(未輸入)や『イリオット』に使われたという。

 主演のジャン有馬は市川雷蔵、彼を慕う徳川家康の孫娘に叶順子、長崎奉行に根上淳、晴信の家臣に山村聰、老中本多正純に歌舞伎界から坂東蓑助が出演している。叶順子の時代劇初出演は『日蓮と蒙古大襲来』に次ぐ二本目で、雷蔵の相手役は初めて。

 一方、雷蔵は「キリシタン大名だからモダンな感じを出したい。扮装は天草四郎を参考に、武者絵から抜け出たような雰囲気を狙っている。叶君とは初めてだが、うまく成功してもらいたい」と、叶をいたわっている。"イベリア国"側の出演者は、伊藤道郎の次男ジェリー・伊藤のほか、アメリカの新聞特派員の娘エリス・リクターなど英、米、ギリシャ、白系露人など二十名がセット入りして、国際色ゆたかな撮影風景を見せている。

 この外人出演者は、総てエスペラント語のセリフにネをあげているが、大阪市大助教授梅棹忠夫、関西エスペラント連盟の藤本達生の両氏の指導でぶっつけ本番でやっている。

 映画の見せ場であるイベリア国の船を焼打ちにするシーンは、琵琶湖で行なうことになっており、いま湖畔に長さ80メートル、高さ10メートルの"黒船"を建造中だ。伊藤大輔監督は、長い間の腹案が実現して連日意欲たっぷり。「この映画に描く事件は、蒙古大襲来以来の外国との接触事件です。有名な史実だけに考証に手間がかります。エスペラントのセリフ、ラテン語の祈りの歌など資料が少なく、頭を痛めています。海上シーンは『ヴァイキング』のような大掛かりなものもあり、面白いものにします」と語っていた。映画化に

 

日スポ・東京 06/15/59