▽伊藤組の『弁天小僧』ではちょうど歌舞伎でもおなじみの浜松屋店先の撮影中。すっかり美しい町娘に化けた雷蔵の弁天小僧が、田崎の南郷力丸とともに浜松屋の店先に上り込み、赤いエリの布を万引?するところ。
この映画では義賊の弁天小僧が、浜松屋の娘お鈴が悪旗本へ持参金つきで嫁ぐという話をきき込み、この婚礼をぶちこわし、持参金を横取りしようと仕組んだ芝居の筋書というわけで、画中、この場面だけは歌舞伎風に挿入される。
関西歌舞伎の市川寿海(雷蔵の養父)の指導で、舞台でやれば四十分以上かかるところを七分にダイジェストし、キマリキマリだけを見せるのだという。ウリザネ顔の雷蔵はなかなかきれいな女形で、赤いエリもともなまめかしいが、「歌舞伎時代、八代目雷蔵の襲名披露には赤星十三をやりましたから、白浪五人男はこれで二人目というわけです。女装というのはきゅうくつで、きゅうくつで、早くボロを出したいですよ」と早くもボヤイている。 |