絶えず意欲的な仕事をつづけている市川崑監督は、こんどは島崎藤村不朽の名作「破戒」(大映京都作品)に取り組んでいる。彼の作品系列を見ると『ビルマの竪琴』、『野火』、『おとうと』と人間の孤独を追及した一連の作品がある。
この『破戒』もその系列の作品にはいる。木下恵介監督の『破戒』はどちらかといえば、叙情的なタッチのものだったが、市川監督は、主人公の孤独を追求しながら、日本の悲劇の断面を描くのがねらいだそうだ。
市川監督にとって『破戒』の映画化は長年の念願だけに、その配役にも慎重で、瀬川丑松に市川雷蔵、その友人土屋銀之助に長門裕之、猪子連太郎に三国連太郎、風間敬之進に船越英二、蓮華寺の住職に中村鴈治郎、その夫人に杉村春子、猪子の妻に岸田今日子、ヒロインお志保には新人藤村志保と、強力な配役を組んでおり、「この配役で、自分のイメージどおりになった。あとは宮川君(一夫=カメラマン)の横で笑っておればいい」とまでいいきっている。
以下、張りきる市川崑監督の表情を写真で追ってみた。 |