仕事熱心なスタアたち
日高: わりに会社がスタア・システムであってみたり、作品第一であってみたりする悪さね、これが悪い影響を与えているんじゃないかな。まあ、話は変るけど、ほかの時代劇俳優よりは、雷蔵にしても勝にしても仕事熱心だよね、作品を選ぶということに一生懸命であってみたり、いわゆるあてがい扶持では喜ばないという・・・。
宇野: 人の顔を見るとなんかいい企画がないかと言うものね。
日高: そうそう、いわゆるあてがい扶持でやられてもどんどん作品に入っていくよりしょうがないもの。そういう点非常に熱心だね、仕事に対して・・・。
本誌: なんかそういうふうに仕事熱心ということでエピソードはないですか。
日高: 雷蔵の場合なんていうの数多くある・・・。だいたい雷蔵という人は、京都育ちの役者さんというのは東京育ちの俳優さんとちがって、あちらはスタア中心だから、それだけになんかいわゆる役者馬鹿みたいなところがありますよ。あまり余分なことは言わない。五社協定なんていうのは、東京の役者がだいぶもめているときに、京都へ行って聞いても「それはわかりまへん」というようなもんで、どこまでわかっているのか知らないけれども、雷蔵だけですよ、ズケズケ言うのは。きわめて近代的に会社の政策に不平を言ってみたり・・・。
深見: 雷蔵は昔から言ったね。
日高: たとえば「安珍清姫」なんかも自分で探してきたもんでしょう。それから錦之助が近松ものをやるといえば、俺もという張切りも見せるしさ。
宇野: 雷蔵は「ぼんち」のときなんか、衣装にものすごく凝ってるわけだよね。なんか二十四枚着替えるんだって、男の衣装が・・・ぜんぶ一流品ばかりで、雷蔵がとくに着物の裏とか、襦袢とか、そういう目につかないところまですごく指定してくるんだってね。男ものの衣装としては最高の金がかかったなんて言っていたけれどね、裏方なんかボヤいていたけれどもね。そういうところにもやはり芸熱心とか、そういうところが出ているように思うけれどもね。着物がよくても芝居が下手じゃしょうがないけれども・・・(笑)
日高: 勝はなんかあるでしょう。
深見: 勝はこのごろ雷蔵のところにきて、共同闘争で、お互いに協力してやろうというようなあれでやってるらしいよ。なんとかいう作品だったな、二人で申込んだらしいけれどもね、二人いっしょというわけじゃなくて、つまり彼が出たら俺も友情出演するとか。
日高: あの二人仲がいいということはいいね、タイプがちがうからだろうけれども・・・。