われらはスターの親衛隊

スター後援会座談会

 ファンをひきつける映画の魅力の大きな部分をしめているのはスターというものの存在である。サイレント時代の昔からスターはスクリーンのアイドルとして観客大衆を魅了してきた。スターの存在を無視しては映画をかたることはできない。

 そのスターを支持する映画ファンの代表ともいうべき、スター後援会の熱心なメンバーに集まってもらって、一夕自由な放談会をひらいた。

 ごひいきスターについて、映画について語るこれらの発言から、純粋な映画を愛する人たちの声を聞きとっていただきたい。

 

スターとファン

双葉 映画が好きで、しかもただ好きなだけでなく特定のスターのファンとして後援会に入り、熱心に活躍しておられるみなさんに集まっていただいて、いろいろ面白い話をしてもらおうというわけです。まず、なぜそのスターの後援会に入ったのか、ごひいきのスターの魅力についてうかがいたいですね。

田崎 やっぱり第一に小林旭が好きだから彼の後援会に入ったわけなんですけれども。(笑)

双葉 どんなことをやってるんですか。

田崎 今の旭の状態じゃ動きがとれないんですよ。ファン同士で映画鑑賞会をやったりハイキングをしたり、あるいは旭の家を訪問したりしてるわけです。それでも今のところ会員は納得して楽しいといってます。

双葉 日活は他にも裕次郎とか大ぜいのスターがいるのに、旭を選んだのは、どこがいいと思ったからなんです?

田崎 やっぱり男らしくて、ちょっと不良っぽいけれど、何となく坊ちゃんらしい感じ。女性に受けてるのもそのへんらしいですね。

双葉 小林旭の主演作品じゃ、どんなのがみんなに評判がいいですか。

田崎 やっぱりやってもらいたいのは『絶唱』みたいな作品ですね。これはいちばん希望が多い。

双葉 『銀座の暴れん坊』シリーズみたいなのはどうなんです?

田崎 ああいうのは、グループに入っているファンは喜ばないですね。スーパーマンみたいで娯楽的にはいいんだけれど、会に入って本当に旭を愛してる人たちは、あまり好まないという意見が多いです。渡り鳥シリーズも、そうとう喜んではいますけれど。

双葉 旭自身はどう考えてるのか聞いてみましたか。

田崎 『絶唱』みたいなのをやりたがってます。だが会社の方針が現在のような方向で、しかもそれが当ってますから、とりたてていうこともない−そういった意見じゃないですか。今のところ喜んで暴れまわってますよ。

双葉 津川雅彦友の会の村山さんはどうですか。

村山 私はどうという理由もなく、最初はお友達に誘われて後援会に入ったんです。はじめて会に出た時、津川さんって俳優さんという感じがしないんです。顔はすごくきれいなんですが、そのきれいさだけじゃなくて、普通俳優さんにありがちのお高くとまってるところがなかった。向こうから私達に話しかけてくださるんですね。気さくに普通の人よ同じように話せる感じがとても楽しかった。それからもう四年になります。

双葉 会でやっていることは?

村山 そうですね。ほかの会を見てますと、たくさんの人を集めて大きな劇場を使って会合をやるのが多いですね。けれど私達の場合は、会員はそう多くはありませんし、ちょっと違います。比較的少人数の会員一人一人に津川さんが愛情を持っていて下さって、楽しくやっているという感じです。そんな風で、大きな会をやるのは年に二回。あとはその間に試写会をしたり、撮影所にいったり、津川さんの家へ遊びにいったりします。ほかの会は、年に何度か錦之助さんなら錦之助さんがファンのかたがたを遊ばせているという感じですね。私達の場合は、私達の遊んでいるなかに、津川さんに入っていただくっていう風です。前に津川さんがハワイへいらした時、向うのファンは大へん闊達でよかったんだそうです。日本の女性はサンドイッチなんか出してもうつむいてなかなか食べない。そんなんじゃなくて、遊ぶ時はいっしょに大いに遊ぼう。そうなって欲しいっておっしゃった。そこで私達は、津川さんにも気楽に遊んでいただくような感じにいつでももっていこうと努力しています。

双葉 津川君はどんな作品を作りたいといってます。

村山 津川さん自身、皆さんみていてわかると思うんですけれど、演技派俳優になろうと思って努力していらっしゃるんです。私達も一本一本作品を見ていて、少しずつ努力してどこかしら変って進歩してきてると思います。だからどういう映画に出たいというんじゃなくて、自分が何でもできる俳優になりたいと思っていらっしゃる。爆発的な人気なんかはいつまでも続くものじゃないからといわれます。

双葉 あなたがたが見て、評判がよかったのはなんですか。

村山 日活時代ですと『今日のいのち』。松竹に入ってからですと『波の塔』なんか、わりと評判がよかった。

双葉 錦之助君の場合は、魅力はもういわなくても解っているようなものですが、人数はおおいんですか。

池沢 のべ三万人位になります。錦之助さんのデビュー当時は中学生が主だったのが、そのかたたちが成長しまして、高校からお年寄のかたまで、層がひろいです。女のかただけでなく、男のかたも多いです。今後もおとこのかたがどんどん入会してほしいと思っています。

双葉 錦ちゃんといっしょにファンも育ってきた感じですね。そういう例は珍しいんじゃないかな。彼も非常に成長していますし、錦之助祭りというのがあるんでしょう。

池沢 会としては「錦」という会報を毎月出しております。行事は錦之助祭りを年二回。それから京都招待というのがありまして、一年に一回十四人の会員を錦之助さんが招待しまして、撮影所見学をやったり、座談会をしたりします。招待する人はくじ引きできめます。グループ活動としては関東、関西、北陸、東北、九州、北海道、四国と七つのブロックに分れてやっております。

双葉 評判のよかった作品は?

池沢 『浪速の恋の物語』『親鸞』『宮本武蔵』などの文芸物ですね。このごろ少くなくなった二枚目のきれいな役をしてもらいたいという声も多いですね。

双葉 『織田信長』をやった時は、汚れ役はいけないという文句がだいぶあったんでしょう。

池沢 あの時はいちばんはじめでしたから。本人は余りきれいな役が好きじゃないです。この前の「錦之助祭り」のときも有馬稲子さんと『浪速の恋の物語』の道行きをやったんです。そうしたら白塗りも結構きれいなんんですが、本人は白塗りでない梅川忠兵衛をやりたかったと平気で言うんです。あまり二枚目は好きじゃないようです。

双葉 雷蔵さんの場合はどうですか。

阿部 うちは会員数は案外少ないんです。二千二、三百というところです。だいたいファン層がほかの人たちと違いまして、主婦のかたが多いものですから、映画を見にいくかたは多いんですけれど、後援会に入るかたは案外少ないんですね。平均年齢は二十八から三十位というところです。

双葉 これは特別な後援会だな。

阿部 若い人もいないわけじゃありませんが、結局家族ぐるみのファンが多いんです。ご主人と奥さんとそのお子さん一家ぐるみというのが多い。そんな場合でも中心になっているのは主婦のかたという感じですね。

双葉 集まって何をやるんです?

阿部 年に二回、春と秋に催しをやって、雷蔵さんの踊りをみたり評判のよかった映画をみたり、大映のスターさん達をまじえて「ジェスチャー・ゲーム」をやったり、楽しく遊びます。

双葉 雷蔵さんの作品で評判がよかったのは何ですか。

阿部 『新平家物語』『炎上』それから『若き日の信長』『弁天小僧』などです。それから二枚目半的な娯楽作品として楽しく家族そろってみられるものなどがいいです。

双葉 『好色一代男』はどうですか。

部 あれなぜんぜん駄目だったんです。主婦のかたなんかが、ああいうのは困るといいます。雷蔵さんから清潔感というものをとり除いたら、価値がなくなっちゃうという考えかたが多いようです。

双葉 山本富士子さんのほうにいきまして、島田さんお願いします。

島田 山本さんの後援会ができてから七年七ヶ月目ですが、会員のかたは年齢層の幅がひろいです。会の催しとしては茶話会を一年に一度やります。山本さんは男性のかたからみても女性のかたからみても理想の女性なんですね。だから会に出ても意見などなかなか出なくて、ただ見とれちゃう感じです。それで会にあまり活発さがないんです。

双葉 どんな作品が評判いいですか。

島田 『彼岸花』『細雪』『白鷺』なんかすばらしかったと思います。今度『女房学校』は水着姿で評判になったらしいんですけれども、私はあまりああいうのはいいと思いません。