清盛という人物

久我 私たちが小さい頃に習った歴史では、清盛という人の印象は年寄りの坊主頭の悪人でしょ、だから、今度の『新・平家物語』で、青年・清盛と云われても、なんだか直ぐにピンとこなかったワ。

雷蔵 そりゃ誰でもそうでしょうネ、吉川さんの『新・平家物語』によって、初めて青年時代が描き出されたんですからネ。

久我 私なんか清盛にも青年時代があったのか知ら・・・なんて思っちゃった(笑)

雷蔵 無茶云ったら敵わんなア誰だって生まれた時は赤ん坊ですヨ。殊に青年・清盛は貴女に恋をして結婚するんですよ。

久我 そうネ、なんだかウソみたい・・・。でも、年齢とってからはどうするのか知ら。

雷蔵 この作品では第一部が青年・清盛が主人公ですが、第二部では木曾義仲が主人公という具合に、その度に主人公が変って行くので、そう全篇に顔をださないでいいんでしょう。

久我 でも私は尼さんになってから、また出てくるんでしょう。

雷蔵 そうやネ、久我さんの尼さんは似合うやろうナ。

久我 あら、失礼ネ。

雷蔵 清盛が時子を好きになるのは、自分の母と反対のものを時子が持っていたからなんですネ。清盛は母の泰子に対して疑問を持っているでしょう。父親のことでも悩み、その父に対する母の暴君ぶり、そういうものにへきえきとしていた彼が、時子という女性にめぐり逢って、パッと好きになっちゃったのは、外観的なものも勿論あるでしょうけど、たとえ僅かな時間でも、その内面的なものに強くひかれたんじゃないですか、ねえ、お姉さま。

久我 あらッ、なぜ私がお姉さまですか。

雷蔵 だって、久我さんは、僕より半年ほどお姉さまですよ。

久我 そうですか、そんなら仕方がないワ。

雷蔵 いわゆるひと目惚れと云うのはどういうのでしょうネ。

久我 さア、私には分らない。

雷蔵 何かこう、放射能みたいのがあるんでしょうネ。原子よりもっと細かい、ビリビリしたもんが・・・。

久我 そんなもんでしょうかネ(笑)

雷蔵 どうも心細い恋人やナ(笑)

久我 でも恋愛って、はじめは何となくそうなって、理論は後からつけるようなものじゃないの。

雷蔵 やっぱりお姉さまはいい事云いますネ(笑)久我さんの血統は何ですか。

久我 清和源氏。

雷蔵 じゃア、敵方じゃないの、えらい人と一緒になるナ。