野心作でいっぱい
市川雷蔵さん
■ 水泳は当分オアズケ!!
『沓掛時次郎』の好評についで、雷蔵さんはこれまた同じ長谷川伸原作『鯉名の銀平』(田中徳三監督)に出演中です。
「いままでだと、こういう場合、再映画化とか、ひどいのになると焼直しなんて言われたものですが、近頃はリバイバルなんて、スマートな言葉があるので得をしてますよ。もっとも、こんどの『鯉名の銀平』は、内容も原作にもっとも近いものに描かれているので、かえって新鮮味のある作品になると思います」
と自信のほどを見せています。そんな意味で、この作品は最初、白黒のスタンダードサイズの渋いものにしたかったのだが、最近の映画館の傾向から、ワイド・サイズで撮影されることになったとか。
この後、雷蔵さんは、川口松太郎原作、八尋不二脚本の『新源氏物語』(森一生監督)に主演することになっています。
「たいがい夏になると、水泳に出かけたものですが、この次が光源氏をやるわけで、まさか真ッ黒に日焼けした光源氏じゃ具合わるいですからね。だからといって、いままでの源氏とはちがったものにしたいです。いまの若い人たちに抵抗を感じさせないように・・・」
と慎重。そのあらわれとして、メーキャップにも、いままでの光源氏の典型であった、お歯黒に白塗り、眉は天井眉毛というきまりきった型を破りたいようす。
「たしかに、当時の風俗とか制度を忠実に描くことも重要な使命なのですが、あのスロー・テンポな平安朝の立居ふるまい、会話などは、いまの若い人にはとうていついてこられないと思うのです。だから、なるべく現代的に描きたいわけです・・・」
と雷蔵さん。相手役は京マチ子、若尾文子、中村玉緒、水谷良恵さんなどがほぼ決定しているほかに、宝塚の女優さんの寿美花代さんも共演がきまったとか。