夢より夢へ

クランクの合間

真夏の京都スタジオに、これはこれは見た眼にも涼しい夏すがたのスター三人・・・!久我美子さんを中心に市川雷蔵さん、林成年さんの若手スターが控室での憩いのひと刻

「新・平家物語」第一部のヒーローとヒロインが大作出演への喜びと夢を語りました。

なんといっても若いスターは明日を背負う第一線の人々です。乞御期待という所・・・!

晴れた日の京都スタジオで、これは出演スター三羽烏が語る青春放談!

演技のこと、そして人生感など−若いスターの四方山話!

時代が時代で昔のお稽古!

−京都の夏は、日本中で特に暑いといわれていますが、その京都で暑い盛りを三ヵ月の長期に渉って撮影を続けられる皆さんの御苦労は、全く大抵ではないと思います。今日はそのお疲れのところを恐縮ですが、いまお仕事中の「新・平家物語」を中心として、いろいろと御自由なお話を伺いたいと思います。

では、まず撮影開始前の準備とか苦心談といったものから、始めていただきましょうか。

雷蔵 苦心といったら、すべてがこれ皆苦心みたいなものだけど・・・。(笑)

 とにかく、演技以前のものだけでも、大変でしたね。私なんかふだんの生活が全然洋式で、和服なんか着たこともないのに、いきなり王朝時代の衣裳を着せられたのですから、その立居振舞に馴れるだけでも一苦労でしたわ。口の聞き方や動作にしたって、常から人一倍早い方が、一テンポも二テンポも遅くしなければならないでしょう。

雷蔵 口のきき方といえば、僕には関西弁の訛りがあるので、テープ・レコーダーを奮発して、セリフの勉強を相当やりましたね。扮装テストの時に、溝口先生から、「うわべだけの清盛でなく、肚から清盛になりなさい」といわれて、常住座臥すべて清盛の気持で暮していますが、この間も吉川(英治)先生や川口(松太郎)専務が撮影所に見えた時に、このことを話したら、傍にいた木暮さんが「それじゃ私は祇園の女御みたいに浮気ばかりしなくちゃいけないわ」といったので、専務が「そんなことしたら和田君(木暮さんのご主人)がおさまらないよ」すると木暮さんが済まして「いいわ、そうなったら大映で引取って貰うから」(笑声)

とにかく、清盛になるには大変ですよ。馬もひと通り乗れなくてはいけないし、最後に日吉山王の神輿に矢を射込むというので弓の稽古もしなければならないし・・・。