陸軍中野学校シリーズ(66/6〜68/3)

 日本陸軍の諜報員養成機関といわれる陸軍中野学校の実態とその活動を描く邦画では、珍しいスパイ映画。66年〜68年にかけて5本製作され、時代劇スターだった市川雷蔵の現代劇での代表作となった。

 陸軍中野学校の一期生となった椎名次郎が敵国スパイをつきとめて、その謀略を打ち砕くというのが基本設定だが、増村保造が監督した一作目のみその基本パターンからはずれて、中野学校生ひとりひとりの悲哀を描いた青春映画として出色のできとなっている。娯楽色がついたのは第二作目以降。

 主人公・椎名のキャラクターは“大菩薩峠”“眠狂四郎”シリーズで市川が培ってきたクールで無頼な二枚目役の延長線上にあり、まさにハマリ役。レギュラーらしいレギュラーは上官役の加東大介ぐらいしかおらず、あとは毎回女優がゲスト出演というシリーズもののお決まりパターン。全作モノクロ撮影の画面も、とかく嘘っぽくなりそうなスパイ戦にリアリティを与えている。( ぴあ CINEMA CLUB[邦画編]より)


陸軍中野学校 シリーズ

陸軍中野学校
 
 
 
 

 

 

『陸軍中野学校』で愛欲の教育実習中の市川雷蔵と松浦いづみ 

(05/27/66)

 

 市川雷蔵が、大映『陸軍中野学校』(増村保造監督)で、濃厚なベッドシーンを演じた。

 徹底的なスパイ教育を受けるシーンだが、スパイにとって女を手中におさめるための一段階というわけ。そのため、まず、セックスということで、加東大介ふんする校長の引率でスパイ候補生の雷蔵が芸者を相手の教育実習となったしだい。

 雷蔵のラブシーンも珍しくはないが、こんな濃厚なベッドシーンはじめて。相手役の松浦いづみは、新人だけに、どうも呼吸があわない。増村監督は「リアルに演じなければ意味がない」と、スタッフ以外はセットに入れず、雷蔵と松浦の気分がたかまるまでじっくり待つ。雷蔵が大胆に松浦の胸をさぐったり、口づけしたりの テストをくりかえすうちに、はずかしがっていた松浦も、増村監督のネライにはまり込み、熱っぽいベッドシーンが撮影された。

 雷蔵はこのシーンのほかに、敵方スパイになった恋人の小川真由美を毒殺する直前、やはりベッドシーンを演じるが「これほどのリアルなベッドシーンは、俳優になってはじめてだ。年がいもなく、さいしょはドキドキしましたヨ」とテレていた。

 

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