役にとけこむ雷蔵
『若き日の信長』撮影開始
市川雷蔵主演の『若き日の信長』(監督森一生)が、このほど大映京都でクランク・インした。昨年の『炎上』で三つの主演男優賞獲得“だからといって、これからの仕事がやりにくいというようなことはない。精一ぱいやるだけです”と言い切った雷蔵、事実その後も以前と変らぬ彼自身のペースをずっと守っているが、この『若き日の信長』の映画化では、雷蔵が自分で大映の永田雅一社長に談じ込んで企画実現につとめたというイワクがあるだけに、クランク・インの日には頭のてっぺんから足の先まですっかり信長になりきった感じだ。 原作大仏次郎、脚色八尋不二のワイド作品で、信長の守役平手政秀(小沢栄太郎)が主君の奇行をいさめるために自害するエピソードや、彼が知謀家として名をはせるイキサツから桶狭間の合戦などがダイナミックに織り込まれている。 その他のキャストは山口家の人質ながら信長に思慕の念をいだく娘の弥生に金田一敦子、林佐渡守の密偵小萩に青山京子ほか高松秀郎、北原義郎などの東京方、また歌舞伎の市川染五郎も雷蔵を助けて出演する。 “ぼくとしてはさきの『新・平家物語』の青年清盛と大へん似た役だけにさらに前進した何かを表現しなければと思っています”とは、はや信長になりきった雷蔵の言葉。(02/17/59付新聞より) |