『若き日の信長』御殿場ロケ
市川雷蔵スナップ集
空はまっ青に晴れわたったピーカン。ロケは問題の桶狭間のシーンの撮影。近郷から集まった約八十頭の馬が、怒涛のようにここ高見塚の窪地を疾駆してはまた引きかえす。甲チュウに身をかため、隊のトップに立って馬を進めていた雷蔵が、ふと気がつくと、原作者の大仏次郎氏が自分を好ましげに見上げている。 “これは、これは”とさっそく馬を降りた彼、初対面とおもえぬくったくのない様子で、さっそくあたりの状況を大仏氏に説明しはじめた。 大仏氏は“『炎上』での彼の評判をさかんに聞くので、一度会いたいと思ってやってきたんだが、なるほど聞きしにまさる好青年だ。私の「若き日の信長」のイメージは海老蔵君をもとに設定したのだが、雷蔵君の信長も大いに満足できそうだ。”と温厚な顔をほころばせる。 |