花に浮かれたわけでもあるまいが、ちょっと色気があって半面グロ味も満点という女装比べが大映、松竹の両京都スタジオで見られた。片や大映の『お嬢吉三』の市川雷蔵、片や松竹『二等兵物語物語・万事要領の巻』の伴淳。

 雷蔵の方は、通称お嬢吉三と異名をとるチンピラやくざが、町娘にふりかかる危難を救うため身代りに女装し、悪人どものもとへ乗込み、アデ姿で鼻下長侍を悩殺させようというくだり。「歌舞伎でもチョイとした女形はやりましたが、やっぱり自分で演っていても生理的にイヤな気がしますねえ。お座興的にはいいでしょうが、あまりなんべんもやりたいとは思いません」と雷蔵はチョイとしぶい顔。

 一方、『二等兵物語・万事要領の巻』で看護婦にふんして得意満面なのが伴淳氏、特攻生き残りの若い将校が、すでに死んだものとして軍神に祭られてしまったため、病院に監禁される。それを恋人に会わせたい一心から、看護婦に変装した伴淳が彼を脱走させる━。「女には出せない、女の色気というものを会得しましてね」と彼はあごをなでながらニヤニヤ。 (フクスポ 04/11/59)