桜咲き乱れる春ウララのきょうこのごろ、花に浮かれたわけでもあるまいが、ちょっと色気があって反面グロ味も満点という女装競べが大映、松竹の両スタジオで見られた。 

 片や大映『お嬢吉三』の市川雷蔵、片や松竹の『二等兵物語・万事要領の巻』の伴淳がソレ。

 雷蔵の方は通称お嬢と異名をとるチンピラやくざが、町娘にふりかかる危難を救うため、身代わりに女装して悪人どもの元へ乗り込み、水もしたたるアデ姿で鼻下長侍を悩殺させようというくだり。

 「歌舞伎でもチョイとした女形はやりましたが、前作“弁天小僧”こんどの“お嬢吉三”などという大役はやったことがなく、映画に出たおかげで、こういう大幹部どころの女形をやらせていただき、役者みょうりにつきる・・・といいたいところですが、やっぱり自分でやっていても生理的にイヤな気がしますねえ。男は男としての本領を発揮すべきで、お座敷的にはいいでしょうが、あんまりなんべんもやりたいとは思いませんねえ」

 と花も恥らう雷蔵はチョイとしぶい顔。