打合わせする市川雷蔵と勝新太郎

 大映京都では、近く撮影を開始する天然色、ワイド『薄桜記』で、市川雷蔵と勝新太郎が久方ぶりにコンビとして顔合わせするというので話題になっている。

 これは五味康祐の評判小説を原作に、伊藤大輔が脚本を執筆、森一生が監督に当るが、雷蔵は丹下典膳、勝は堀部安兵衛に扮し、相反する二剣士の宿命的な対立と、これにからまる武門の意地、男の友情、さらにひとりの美女をめぐる愛情の相克などを描く格調高き時代劇である。このほど最初の打合わせで顔を合せたふたりに、いろいろ作品について聞いてみた・・・。

 
 

三年ぶりに四つに組む

・・・雷蔵・勝のコンビ作品は、昭和二十九年『花の白虎隊』でデビュー以来、三十年の『踊り子行状記』、『怪盗と判官』、三十一年の『秘伝月影抄』、『花頭巾』など数本を数えるが、その後はオールスターもので顔合わせする程度で、ガッチリ四つに組む共演はまさに三年ぶりということになる。

・・・こんどは赤穂浪士の討入りを時代背景に、相反する二つの道を行くふたりの青年剣士、丹下典膳と堀部安兵衛の友情と運命が感動的に描かれるが、久方ぶりのコンビ作にふさわしい互角の配役だけに、早くもセットでの火花を散らす競演、熱演ぶりが期待される一作である。

意気いよいよさかん

・・・ベニス映画祭での“シネマ・ヌウボ誌”最高演技賞を受けて意気ますます盛んな雷蔵は、いま『かげろう絵図』で山本富士子と共演中であるが、今秋製作が予定されていた西鶴の『好色一代男』、山崎豊子の『ぼんち』がいずれも来春に延期された後だけに、丹下典膳といういままでにない役どころを得て、大いに意欲をもやしている。

・・・典膳は神伝知念流の剣の名手だが、最愛の妻千春が、五人の男に犯されて以来人柄が一変、ついに右腕を切り落され、眼ばかり鋭く輝いた死人のような顔のニヒルな男に変るが、最後は千春と相擁して死んで行く・・・。