正月を日生劇場の舞台で過した市川雷蔵は、今年の映画初仕事として、三島由紀夫がさきごろ発表して、話題をまき起している小説「剣」に取り組むことになった。雷蔵の現代劇出演は四年ぶり。また、同じ原作者の「金閣寺」を映画化した、彼自身の主演作品『炎上』(33年)はブルーリボン主演賞を獲得するなど、彼自身にとっても記念碑的な作品に結実しているだけに、今度の作品には、大いに意欲を燃やしている。
演出には、最近とみに円熟味を加えて来た三隅研次が当り、また、脚色は舟橋和郎が、撮影は牧浦地志が担当する。
内容は、ある大学の剣道部を舞台に、キャプテン、国分次郎の剣道ひとすじに心も肉体も打ち込んで、ひたすら技の修練に己の生命を賭ける、という現代稀に見る孤高で、力強く純粋な青年の生き方を描くもの。彼を取り巻く副人物にクラスメートの部員、賀川の川津祐介、主人公を崇拝する下級生、壬生に長谷川明男、監督木内に河野秋武らの出演が決定しているが、他に、原作にない登場人物として、女子大生に藤由紀子が扮する。
主なスタッフ、キャストは次の通り
スタッフ 企画(藤井浩明)、脚色(舟橋和郎)、監督(三隅研次)、撮影(牧浦地志)、録音(奥村雅弘)、照明(山下礼二郎)、美術(内藤昭)、音楽( )、編集(菅沼完二)、スチル(藤岡輝夫)、助監督(友枝稔議)、製作主任(村上忠男)
キャスト 国分次郎(市川雷蔵)、伊丹恵理(藤由紀子)、賀川(川津祐介)、壬生(長谷川明男)、木内(河野秋武)、藤代滋子(弓恵子)、壬生早苗(小桜純子)、壬生福美(堀川真知子)、村田(川畑愛光)、多田(高見国一)、国分誠一郎(稲葉義男)、国分ひろ子(平井岐代子)、学生甲(矢島陽太郎)、木内夫人(橘公子)、長谷川(布目真爾)、服部(土本正文)、横山(黒木英男)、城戸(伊東義高)、山岡(松田剛武)、坂本(三夏伸)、庄司(和泉圭馬)、日下部(酒井修三)、武井(細谷新吾)、山岸(三木正八郎)、壬生豊子(新宮信子)、発送部長(水原浩一)、守衛(加賀美健一)、若者A(当銀長次郎)、同B(北野拓也)、学生乙(香住巌)、同丙(安川洋一)、男A(木村玄)、同B(舟木洋一)、同C(桂三千秋)、老婆(小松みどり)、敏子(高森チズ子)、おっさん(堀北幸夫)