若親分乗り込む
1966年5月3日(火)公開/1時間23分大映京都/カラーシネマスコープ
併映:「座頭市の歌が聞える」(田中徳三/勝新太郎・小川真由美)
企画 | 八尋大和 |
監督 | 井上昭 |
脚本 | 浅井昭三郎 |
撮影 | 今井ひろし |
美術 | 上里忠男 |
照明 | 加藤博也 |
録音 | 奥村雅弘 |
音楽 | 小杉太一郎 |
助監督 | 国原俊明 |
スチール | 西地正満 |
出演 | 本郷功次郎(寺井三次郎)、藤村志保(柳子)、松尾嘉代(お峰)、垂水悟郎(北川憲兵隊長)、守田学(小島憲兵曹長)、北城寿太郎(郷田大介)、遠藤辰雄(河村)、戸田皓久(竹村少佐)、三島雅夫(吉村少将)、高杉玄(下田憲兵伍長)、浜田雄史(志村)、沖時男(仙吉)、橘公子(たね) |
惹句 | 『憲兵が何だ!顔役が何だ!喧嘩作法は海軍じこみ!どぎもをぬくぜ殴り込み!』 |
◆ 解 説 ◆
市川雷蔵の新しい男性的魅力を一挙にクローズアップした“若親分シリーズ”は、海軍仕込みの正義感がほとばしる啖呵の切れ味、黒潮で鍛えた赤銅色の鉄拳がはじきだすアクションの爆発という、痛快で豪放な活躍が一作毎に好評をあびているが、好漢南条武の若親分ぶりも、この第四作「若親分乗り込む」では、一段と貫禄もスケールも増し、ボスややくざと結託して悪徳をはびこらせる憲兵隊の非道な権力と対決、胸のすく一匹狼の壮烈な血闘をみせる、ゴールデンウィークのスクリーンにふさわしい華々しいダブルパンチの効いたファン待望の強力作品である。
昇り竜の入墨みも鮮やかに、白鞘のドスをかざして憲兵隊へ単身乗り込む南条武には、四度び市川雷蔵が取り組んで威勢のいい男伊達をみせる。そして、若親分の前に立ちはだかる熱血の青年やくざに本郷功次郎、零落した親分の一家を健気に守る娘に藤村志保、本郷を正業にもどそうと純情を捧げる料理屋の仲居に大映初出演の松尾嘉代、憲兵隊長に垂水悟郎と多彩な出演者を配して、新鋭井上昭監督が、新鮮な感覚を奔放に駆使して、題名どおりの男性アクションの魅力を総ざらいする娯楽活劇の決定版を製作する。(大映写真ニュースNo.691より)
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◆ 梗 概 ◆
磯田政吉は軍隊を脱走して捕まり、営倉で自殺した。政吉の父、津の崎の磯田組親分はそのため、憲兵隊のきびしい取り調べと拷問を受け、死んでしまった。亡父の七回忌に磯田組を訪れた南条武は、磯田の娘柳子を助けて、ともかくも葬式を済ませた。女ながら勝気な柳子は、弟の脱走と自殺、そして憲兵隊の父への拷問とその死に何か隠された理由があると思っていた。
その夜、磯田組と対立している郷田組の幹部寺井三次郎が香奠をもって訪ねてきた。柳子は冷たく突っぱねたが、武はそれをとりなして、丁重に三次郎を帰した。郷田組は土地のボス河村の後ろ盾と憲兵隊の権力をカサにきてのし上がってきた新興やくざだった。そのため、陸軍の御用を務める穀物問屋西野商店が潰れ、荷役を請負っていた磯田組は解散同様の有様となっていた。武は郷田組の不正を暴き、津の崎を元の通り平穏な町にしようと決心した。
手始めに武は、郷田組の宴会に現われ、挑発するような不敵な言葉を残した。ところが、武は海軍時代の旧友竹村少佐に出会い、意外な話を聞いた。霞が浦に飛行場建設の計画がすすめられているというのだ。しかも、この秘密計画はすでに憲兵隊から郷田組と河村にもれていて、郷田組は河村や憲兵隊とグルになり土地買収計画をすすめているというのだ。
その真相をさぐる武に対して郷田組と憲兵隊からの風当りが強くなったが、武は、次第に核心に迫っていった。武を始末するしかないと悟った郷田は、三次郎に武を片づけるように命じた。二人の決闘は悲壮なものだったが、三次郎は武の暖かい心に負けた。武は三次郎の恋人お峯の悲しみを知っていたのだった。
憲兵隊にいる西野商店の息子幸造は、政吉から憲兵隊の不正を知らされていた。身の危険を感じた幸造は、脱走して、武に総てを知らせた。武は、総てが郷田組と憲兵隊の不正が原因だという確証を得た。そして、磯田親分遺愛の白鞘を手にして郷田組の待つ波止場に向い、郷田組を叩き潰した。武はその足で、東京から来ている、特命査閲官吉村少将のいる将校集会所に向った。海軍の制服に身を包んだ、正義一筋に生きる若親分南条武の晴れ姿であった。
詳細は、シリーズ映画「若親分シリーズ」参照。