1966年9月3日(土)公開/1時間24分大映東京/カラーシネマスコープ

併映:「脂のしたたり」(田中徳三田宮ニ郎・富士真奈美)

企画 関幸輔
監督 田中重雄
脚本 高岩肇
撮影 高橋通夫
美術 柴田篤二
照明 柴田恒吉
録音 渡辺利一
音楽 北村和夫
助監督 瀬川正雄
スチール 薫森良民
出演 嵯峨三智子(沢木鶴代)、藤巻潤(井川大尉)、竜岡晋(田所徳三郎)、青山良彦(梅村五郎)、明星雅子(千代菊)、見明凡太郎(梅村猪之助)、戸田皓久(中尾大尉)、夏木章(沢木仙吉)、二本柳寛(北門辰造)、早川雄三(大貫伊平)、仲村隆(矢部大尉)、園田哲也(藤崎大尉)、石黒三郎(藤崎大尉)、木村玄(人斬り政二)、杉田康(紋次)、三夏伸(三吉)
惹句 『海軍魂が、だまっちゃいねえ悪がのさばる故郷の町で、罠を知りつつ殴り込み』『やくざ相手じゃ、ものたりねえ後にかくれた大ボスの、首筋おさえた若親分が、切ったタンカの痛快さ

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★ 解 説 ★

☆好調の市川雷蔵主演シリーズの五作目。頭も切れる、腕も立つ海軍士官出の若親分の魅力をスクリーンにたたきつける颯爽娯楽巨編。

☆大喧嘩の後、訳あって故郷を離れた若親分が久しぶりに帰ってみると、そこは悪の巣窟だった。一度は“誰も知らない土地で新しい人生を拓く”ことを決心した若親分だったが、体を流れる仁侠の血は彼をひきとめ、ついに悪徳やくざを一掃、街を明るい姿にする。

☆出演は、雷蔵のほか、若親分が自分の父親の仇と知りながら、その人柄と正義感に心ひかれてゆく料亭の養女に嵯峨三智子、若親分の海軍士官学校時代の同期に藤巻潤、若い血潮を悪にぶつける青年に青山良彦、その恋人に明星雅子、それに戸田皓久、見明凡太朗、二本柳寛、北原義郎、龍岡普、北竜二と、新鋭、ベテランのキャストが組まれている。

☆監督はベテラン田中重雄、撮影は高橋通夫が担当する。

完成記念スチール

★ 物 語 ★

 大正末期のある初夏の日、隣接する大浜市は、郷里出身の大物政治家田所徳次郎を迎え、築港拡張工事の起工式が行われ、街中湧き返っていた。その頃、どこからともなく、数年前、父の急死から海軍士官の職を辞め帰郷し、街を暴力で支配していた大田黒組をやっつけると共に、父の仇を討った庶民の英雄南条組の二代目の武の姿を、見かけた人があると噂がひろがり、元南条組の代貸で、今では細々と小料理屋を経営する猪之助や三吉を喜ばせたが、いっこう武の姿は現れなかった。

 その頃、橋の上にたたずむ武の姿があった。昔、渡世の仁義から沢木組の親分を斬ったその橋の上に・・・。その時、武は海軍時代の親友井川に偶然出くわし、久しぶりに昔の話に花を咲かせたが、目下鎮守府の工事関係、軍需品の一手納入を請負っている北門組が、どうも悪い評判が多く軍部内の不正も考えられるので、この際武が海軍の為にやってくれるなら一切を任せると上司も言っとられると語り、武の決起をうながしたが、武は「誰も知らない土地で新しい人生を拓きたい、もちろん南条組を再興する気持は毛頭ない」と、その厚意に感謝しながらもきっぱり断った。

 一方、猪之助の長男で市の土木課に勤める五郎たちが、北門組の工事入札に不正があるとみて秘かに糾明しているのを知ると、北門組は横暴は手段で五郎たちを襲撃した。これを偶然目撃した武は危うく五郎を救い、昔なつかしい猪之助や今は堅気の乾分達と再会したが、もちろん「組を再興してくれ」との懇願を受けつける筈はなかった。

 しかし、武は一人期するところがあった。仁侠の血が湧たつのをどうすることもできなかった。単身、武は乗り込んだ。初めて相対した辰造は武の容易ならざる相手であることを知り、だまし討にしようとしたとき、武を助けたのは料亭「千花」の養女鶴代だった。武は鶴代が昔、自分の斬った沢木仙吉の娘だと知って、その驚きは大きかったが、一方、父の仇と知りながら武の男らしい人柄と、北門辰造たちの不正を憎む正義感から、鶴代の気持ちは武に急速に惹かれていった。

 武が北門組へ赴いたことを知ると、海軍の旧友は武を訪れ、裏切り者ときめつけると絶交を宣して帰っていった。武と北門組の対立は風雲急を告げた。一方、五郎たち正義派の北門攻撃も活発になっていった。

 ある日、井川と不審げな一人の女が連れ立っているのを見た猪之助はその跡をつけて行った。その頃、北門組に呼び出された井川の身を案じた仲間の海軍仕官たちは策つきて武の所へかけつけ相談した。井川が北門組の奸計に落ちたと直感した武が起ちあがったとき、血まみれの猪之助が息もたえだえに入って来た。井川の身を案じて後をつけた猪之助は北門組に発見され殺されたのだ。

 武の正義感は爆発した。単身、乗り込むと片っ端から北門組を斬り倒した。かなわぬとみた辰造は「千花」に逃げたが、追った武が一室に辰造を求めて飛び込んだとき、そこには田所の姿があった。武の危機をみて飛込んだ鶴代は辰造の刃に倒れたが、悪徳やくざを斬った後、駆けつけた井川たちから街の粛清も間近いことを知った武の顔は明るかった。

 数刻後、包囲した警官達を尻目に、六人の軍服姿が立ち去った。その中に鶴代に悔恨の思いを残して歩を進める武の姿もあった。( 公開当時のプレスシートより )

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若親分

作詞:鈴木信雄 作曲/編曲:浜村はじめ 唄:藤巻潤

一、 呼ぶな恋風 とめるな夜風
後を向いたら 未練が笑う
度胸いっぽん さらしを巻いた
男ごころを 誰が知ろ
二、 俺のこの目は 腐っちゃいない
見ても見ぬふり 俺には出来ぬ
野暮な喧嘩は 買いたくないが
親に貰った血がさわぐ
三、 口がさけても 惚れたと言うな
後で泣くのは あの娘じゃないか
胸にまっ赤な 涙をのんで
月を見上げる 若親分

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詳細は、シリーズ映画「若親分シリーズ」参照。

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