唄いまくる“おけさの半次”
雷蔵の気品、橋の清新さ、まさに好一対の旅がらすコンビだ |
十六日クランクインした大映の『おけさ唄えば』は、橋にとって三本目の映画だが、前二作はチョイ役でヒット曲を唄うカタチ。それがこんどはトップスタア雷蔵とのコンビで、一気に映画俳優として売りぬこうというわけだ。
なにしろ大映永田社長の力コブも大したもので、“橋ブーム”を頂点にのせようとする歌謡股旅調の娯楽篇。若さと新鮮さを狙って、脚本は現代劇畑の笠原良三に書かせるという懲りかた。役どころも、一本どっこの旅がらす“一本松の千太郎”に扮する雷蔵の向うを張って、橋は最後に雷蔵と義兄弟の仲になる歌のうまいチンピラたくざの“おけさの半次”。 年も一まわりちがいのヒツジという兄貴分の雷蔵が、橋のメーキャップにまで実の弟のような気の配りようだ。雷蔵好みの濡れ髪ヅラをつけると、いかにも橋はイキのいい街道ガラス、噂のように顔だちもよく似ている。 コンビよし、タイミングまたよし、永田社長の期待どおり、この一作で橋が一本どっこの映画スタアになれるかどうか・・・
『おけさ唄えば』を演出する森一生監督は「橋クンの若さを思いきって出してみたい。芝居はまだ固いが、時代劇の約束事にこだわらず、楽しい映画にするつもりだ」と自信満々。歌は「おけさ唄えば」「逢いたいぜ」「流転がらす」を唄いまくる。雷蔵のほか、中村玉緒、水谷良重、中村鴈治郎という豪華な共演者を得たことも幸せだろう。 |