唄いまくる“おけさの半次”

春のひざしをうけて撮影所の中を仲よく散歩する雷蔵兄貴と弟分橋クン

 このカメラテストが終った十四日の夕方。橋は姉の芙美子さんと比叡山へドライブ。ひさしぶりで完全に仕事から解放されて、大喜び。まるで小学生のようにハシャイだり、「ヒェーッ、すげえ景色だナ。だからヒエー山か・・・」とシャレのめしたり、真赤なジャンパーがよく似合う十七歳に返った。「楽しかったヨ。だけど頂上がちょっと寒くて、風邪ひいたかナ・・・」大丈夫かい、と心配すると「カゼは健康のアクセサリーだヨ、ハハハ・・・」と笑いとばした。中学の修学旅行で来ただけの京都で、たとえ数時間でも仕事をはなれてドライブを楽しんだ橋は、いかにも幸福そうだった。

比叡山の頂上で幸夫クンはゴキゲンだ

 そのゴキゲンなところで、一問一答をすると -

−学校の勉強はどうしている?

 通信教育式にテスト問題を送ってもらうと、答案をすぐ送り返している。これが出席日数になるんですヨ。

−だいぶおシャレのようだけど・・・

 (テレて)このズボンは裕ちゃん型で、膝でぐっとしめて裾をひらく。裾幅は5インチ。頭の“橋刈り”はトレード・マーク(看板)だから、ちょっと変えられない。

− ファンについては・・・?

 ありがたいですヨネ。いまファンレターが一日平均七百通、家にかかる電話が八十回くらい。でもステージへ上ってきて、僕のからだをゆすったり、テープでグルグル巻かれちゃあ唄えませんヨ。何事も度が過ぎるとネ。

− 歌と映画を両立させるのはむずかしいというけど・・・

 いまのところは歌のほうが主ですが、これはぼくの生き方の問題ですからネ。会社まかせでなく、自分でよく考えて・・・ 

 このへんが、橋の頭のキレる点だ。ある雑誌の席で、だれかが「XXは俳優にしては頭がいい」といったら、橋は笑顔で「スタアってそんなにバカなんですか・・・。だったらスタアなんてやめたいナ」と、すかさず切り返した。若さといえば若さだが、こんな真面目さ、素直さが、橋ファンをうなずかせる一つの要素ではあるまいか。

雷蔵サンはたよれる兄貴

 

“ほんとうにボクに似てるね”とあきれる雷蔵兄貴

 「『おけさ唄えば』は、きっとヒットするヨ。僕と橋クンはヒツジ年同士だから、二人で日本中の札を喰っちゃうんだ・・・」という雷蔵が、はじめて橋幸夫を見たのは『木曾ぶし三度笠』のセット。

 「似てるから一度会ってごらん」といわれていたが、初対面では「どうも似てない」と思ったそうだ。だが、歌を聞くと、これがぐっとイカす。「この明るいムードを股旅物に生かしたら・・・」と、共演を楽しみにしていたが、こんど濡れ髪のヅラを仲よくつけて見ると、なるほど顔がよく似ている。雷蔵の解説によると「ちがうところは、僕はよく顎をひくのに、橋クンは顎を出すクセがある」そうだ。

 だが、この十七歳歌手は、まだまだブームをつくりそう。とてもアゴを出すどころではない。そこで、十四日、『好色一代男』を撮りおえたばかりの雷蔵と、ハリキリボーイ橋幸夫の“義兄弟”対談をもよおした。

 

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